俺の軟禁生活は紅が居たとしても特に変わることもなく、暇な時間が流れていく。
なにか新しい趣味でも作ろうかと思い、適当に雑誌とかネットで調べてみたけどしっくりこない。
「紅、夕飯何がいい?」
「肉」
「お前が肉食なのは知ってるけどずっと肉しか言わねーじゃん」
「肉が食いたいんだよ」
「わかった、今日は魚な」
「・・・まぁいいけど」
紅から了承も貰ったことだしさっさと黒羽さんに電話しよう。
そうして電話をすればなんか部屋に来ると言っていたけどどうしようか。
俺の軟禁生活の原因となった物理教師についての報告だろうか?
なんかわかったらすぐに教えてくれると言っていたし、記憶を消したら知らせるとも言われたし。
それはともかく、黒羽さん達はあのお面がどうのこうので飯は一緒に食えないから量を増やす必要は無いとしてもカイン先輩や理事長はどうなのだろうか。
カイン先輩も一応は候補であったし、家が元老院と繋がりがあるらしいので事情は把握しておきたいらしい。
理事長は言わずもがな実際に物理教師になんかしているのだろうから説明役として来るだろう。
ってことで大体二人分増やせばいいか。
もし来なくても紅がいっぱい食べてくれるのだから気にしない。
「黒羽さん達来るらしいよ」
「なんかわかったのか?」
「詳しくは来てからだって」
そんな会話をしてぼーっと食材が、黒羽さん達が来るのを待っていると呼び鈴が鳴る。
まあ鍵なんて意味ないから呼び鈴も意味ない、なんてのも前の軟禁生活で悲しいことにしっかりと学んだ。
「有難う御座います」
黒羽さんから袋を渡されてお礼を言うとすぐに冷蔵庫へと食材を入れていく。
そんで予想通りと言うか理事長とカイン先輩も来ていた。
「久しぶり、トラブルメーカー」
「誤解を招く発言は慎みましょうか、カイン先輩」
「頬の傷も大分よくなったみたいだね」
「はい」
あんまりなカイン先輩の挨拶に、理事長からの優しい言葉。
でも理事長が結構腹黒属性だってことはもう知っているので絆されはしないけど。
頬の傷と言えば、やはり掠めただけとはいえ刃物で切られたので治りは遅い。
紅に血を吸われた痕は何故かすぐに消えてくれるのだけど、それは吸血種のなんかの力だろう。
まだ赤い線が頬に残っているとはいえ、このままきちんと消毒とかしとけば痕は残らないと言われた。
二人は紅にも挨拶するとソファーに座る。
それに飲み物をだしてやってから俺も座ると、脇に黒羽さんが立つ。
出来れば座ってほしいのだけど何回言っても遠慮するので俺も諦めたのだ。
「あ、夕飯食ってきますよね?」
「もちろん!」
「有難う、是非頂くよ」
確認とったので本当はすぐにでもキッチンへ行きたいのだけど話を先に聞かねばならない。
「で、話ってのは?」
「物理教師の件なんだけどね、やっぱり何かあるね」
「俺を襲った吸血種との繋がりですか?」
「うん、あの吸血種は人間との共存を否定する側の一族の一人だよ」
でもあの吸血種はまだ意識が戻ってないみたいで詳しいことはわかっていないらしい。
だからかまだ物理教師の記憶も消せていないとか。
「花嫁が透だってばれてんのか?」
「それは何とも言えないところだね」
「透ってばれてなくても王と花嫁が出会った、ってのは広まってると思うよ」
「カイン君の言うとおり、それは確かだよ」
やばいんじゃないかそれは、死亡フラグが確実にたってるよ。
俺は今以上に監視される日々を送らなければいけなくなったり狙われるのだろうか。
「俺どうすればいいんですか」
「こちらとしてはもう学校辞めてくれれば嬉しいな」
「やめてください泣きますよ」
「じゃあ俺の実家にでも避難するか?」
「学校辞めるの前提ですか」