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「お前、俺が卒業したら学校退学しろ」

「話が一気に飛んだな、紅」

「でもそうしたほうがいい気もしますよ?」

「ちょ、理事長まで言わないで!!」

「そうするか」

「・・・・・・」

最後の黒羽さんの呟きは本格的に笑えないのですけど。

話をし終わり、一息ついていたら何故かものすごい真剣な顔で突飛な紅の提案に何故か賛成な理事長と乗り気な黒羽さん。
こんな権力やら力(物理的な意味で)の強い人たちに見下ろされながらとか怖すぎる。

「とにかく、物理の教師はこちらで調べておくよ」

「では我等は今回の吸血種を調べてみよう」

「俺は・・・透の監視でもしとくか」

どうしてさっきから紅はそんな酷い提案ばっかりしちゃうのかなー、そんで賛成しないでお二人さん!!
だけどもやはりと言うべきか軟禁生活パート2が始まるようですイエーイ・・・
無理やりにでもテンションをあげてみたけどもうなんというか既に泣きそうですどうしよう。

「別に連絡手段まで断つわけじゃないんだし、お友達に電話しても全然構わないんだよ」

そうフォローしてくれているけど、この前の軟禁生活でも自分から連絡とろうとしなかったしなぁ。
というか一番の問題はそんな趣味と呼べるものがないので暇で仕方ないというところですよ理事長さん。

「勉強しなさい。紅も一緒に軟禁するからさ」

「あの、笑顔で言うことじゃないと思うんですけど」

「そう?」

そうですよと言いたかったけど笑顔が眩しすぎたので口を噤む。
僕腹黒属性の扱いはわかんないんですよ、ある意味真っ直ぐすぎる正樹とかと一緒にいるんだし。

「兎に角、あの教師はクビにしてあの時のことは忘れさせるから心配しないで」

「はい、有難う御座います」

「では結界を張る準備をしてこよう」

「よろしくお願いします」

理事長と黒羽さんが退場なされたのでちょっと機嫌の悪い紅と二人っきりになってしまう。
全面的に俺が悪いんだけど、それならそうと正面から言ってくれないと男じゃないぞ紅。

「着替えとか持ってくる。お前も同室者に連絡いれとけよ」

「わかった」

案外普通の声音で話しかけてきた紅は出ていくと、ものの10分ちょいで帰ってきた。
まあほら、倦怠期になるとか旦那様に嫌われるとかそんな夫婦生活はいやだから安心した。

「血」

「・・・はいはいわかりましたよー」

どうやらちょいと不機嫌だったのは血が飲みたかったかららしい。
いつも通りにボタンを開けて首筋を晒せば紅の大きな手が血流を確かめるべく素肌を撫でる。

小さな痛みが襲うと共に紅のサラサラとした黒髪が肌に触れてこそばゆい。
肌色を赤で塗り替えられて行き、そしてその赤を拭い取られる。

こそばゆい感覚がなくなった。
つまりは紅が血を吸い終わったということなんだが、今日は早い。
有り難いとは思うのだけど、こんなに早いのは珍しいのでやっぱり少し驚く。

「もういいの?」

「少しずつ毎日飲むことにする」

うわぁなんか毎日ってのはちょっとあれだな、辛いとは言わないけど数日おきにだったから慣れない。
まあ多少生活に支障があろうが紅も今回は24時間一緒らしいし。

「あ、その・・・紅、本当に一緒に軟禁されるの?」

「そのつもりだが?まぁ、別に監視しなくてもいいんだけどな」

「じゃあなんでさ」

「問題起こしてばっかのお前の教育的な?」

「教育って・・・今までの不可抗力だし!!」

そうだよ、今回のだって先生は人間って知ってたからついていったんだし吸血種だったらシアとかと変わって貰ってたし。
まあこれからも花嫁、だなんてものになってしまったから問題はわんさか起こるんだろうけどね。

「とりあえず夕飯は肉な」

「えー、買ってきてないかも」

「・・・お前でも食うか」

「ん?」

「なんでもない。黒羽共に頼んどけ」

頷いて電話をかけるとすぐに出て、冷蔵庫を見ながら頼んだ。
つい先日まで同じことしてたんだよなぁと思いながら、むしろ自由だった時間は24時間もなかったんじゃないのかもしれないと今更ながらに気付いたのだった。


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