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更に数日がたてば傷も完治して、むしろ浅すぎるぐらいの傷なのに長く休んでたことを申し訳なく感じる。
それでも周りには流行り風邪にかかってしまったということにしている。
もちろん詩葵や正樹にはきちんと説明したらしいしシアには紅から話をしているとのことだ。
俺がするべくこともなく、ただ紅のお世話に費やしていたこの時間もやっと終わった、よくがんばったな、俺。

それは置いといて久しぶりな教室に普段ならこれから授業かよと思うところだが今日は何というかちょっと嬉しい。
今日は体育もないので変なことしない限り怪我もしないだろう。
第一に運動音痴なわけでもないんだし。

「お久しぶりです、透」

「シアー、久しぶりだなー」

本当は会いに行きたかったけど血の臭いで暴走なんかしたら一生立ち直れないから行かなかった云々。
とにかく心配してくれてたことは十分伝わったので礼を言うと紅様から時々様子は聞いてましたけどね、と言った。
それを聞いて思うことは、紅って偉いやつなんだなーってこと。

なんか貴族の出だとかいろいろ噂で聞いたことはあったけど、亭主関白気味な紅しか知らないし。
基本目で見たことしか信じないタイプなので王子様みたい、と誰かが言ったのに対してそっと耳を塞いだのは秘密だ。

「詩葵たちとはまだ会ってないんですか?」

「んー、まだ暫く詩葵は寮部屋に帰って来れないとか黒羽の人たち言ってたからなー」

「学校に来れるようになって良かったですね」

「流石にこれ以上皆と会えないのは寂しいからな」

「僕もですよ?」

その瞬間一部のクラスメイトは倒れる。
理由は言わずもがなシアにあるのだが不思議そうに首を傾げるだけだ。
また何とか起き上がろうとしていた奴らがバタバタと倒れていったのにはもう何も言うまい。

「どうしたんでしょうね?」

「・・・シアは可愛いなー」

「紅様に聞かれたらどうするんですか?」

「こんなの浮気じゃないんだ、気にすんな」

冗談めかして笑ってみる。

というか俺らに浮気なんてものがあるのだろうか。
紅はそりゃ選り取り見取りなんだろうけど俺は知らない。
とは言うものの今現在毎日俺の部屋に来る紅が浮気できるんだったらむしろ凄い。
だって最後の授業終了の合図から5分経たずで来るんだよ。

それからもうだうだ雑談を続けていれば欠伸をしながら歩いてくる正樹。
詩葵は翠の教室の前で離れたくないよと愛を囁き続けているのだろうからまだ来ないだろう。

「よー正樹」

「・・・?っ、透!!久しぶりー!!」

感極まったように抱き付いてくる正樹を、押され気味になりながら抱きしめ返す。
たぶんこの学園で一番長い付き合いなので、正樹が素直で感情がわかりやすいのも含めてコイツのことなら大体わかる。
今は本当に寂しかったと全身で訴えてきているので流石に邪魔だとか言うほど悪魔じゃないさ。

「・・・紅様が怒りますよ?」

「大丈夫だって」

「うへー紅様こえー」

まだ正樹は紅にあったことがないのでシアのマネして紅様と呼んでいるみたいだ。
時々、こんなやりとりではあるが紅が偉い人で周りから尊敬されてたり畏怖されてるんだなって思い出す。

出会いも出会いだし、よくわかんないうちにこんな関係になったんだし。
きっと今日も部屋に戻ったら難しそうな本読んで俺の作った飯を食うのだろう。

「・・・・」

「いやー、新婚生活は上手くいってるみたいだねー」

「そうですね、良かったです」

今、どこからその話にとんだんだ。
眉を寄せて聞くと顔が父さんを見る母さんの目に似てると返された。
・・・いったいどんな反応をすればいいのだろう。


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