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それから数日、俺は全く外に出してもらえなかった。
もともとどちらかと言えばインドア派とはいえ、カーテンは閉め切り買い物にすらいけない。

そして黒羽さんは居なくなったとはいえ学園内にはいるらしく、電話一本で雑用をしてくれる。
申し訳ないと思って極力呼びつける回数を減らしたらむしろ誘拐されたのではと凄い剣幕で来るので買い物やら頼んでいる。

ついでに言うとカイン先輩もよく遊びに来てくれる。
怖いのか知らないけど黒羽さんはかならず一緒に来るからまあ気をつけてくれてるんだろう。
主に俺を襲わないようにって。

そんで紅は毎日来るというかもう泊まっているかんじだ。
最初は律儀にも帰っていったがその次の日からは普通だ、普通。
血を吸うことはないけれど、まあ動物を狩りに行ってるらしいからいいのだろう。

そして意外だったのが一応というか根は真面目な方だから授業はよっぽど眠い時以外はサボりはしないと言っていた。
その為今日も俺の部屋から出ていき授業が終わったら帰ってくるのだろう。
専業主婦よろしく昼間は昼寝したり洗濯とか掃除とかいろいろしてゴロゴロする。
俺は本物の専業主婦でもないから結構手を抜いているのでよく見れば少し埃があるとか言われても困るがね。

紅はいつでも腹が減っているのか知らないけど隙あらば何かを食っている。
なので帰ってきて簡単に食べれるおつまみを用意しておく。
この国では未成年のアルコール摂取を許可されているので紅は帰ってきたらワイン片手にチーズつまんだりしてる。
たまに日本酒とか、俺にカクテル作らせて(味の保証は出来ないけど)飲んでるけど基本ワインかな。

そんなこんなで今日はイカを炙って後は漬物みたいなのを用意しているので日本酒だ。
基本紅が冷蔵庫からワイン取って何時の間にか飲んでるんだけどたまにこうして先に用意しておくこともある。
というかそんなことしないと暇すぎて本気で死にそうなのだ。

完成、と声を上げると同時に扉が開く。
黒羽さん達が作った結界は物理的なものも無効化としてしまうので鍵なんて意味がない。
それにもしものためにって四人で結界をはっているので一人倒されても俺が無事に守られるようにだってさ。
いやー本当に俺にそんなことされる価値があるのかって言いたいんだけどあるんだろうねー。

「お帰り、紅」

「おー」

きちんと手を洗った後にいつも通り冷蔵庫から酒を取り出そうとするので準備してるから、と制す。
それに今日はなんだよーって聞いてくるから答えて酒を注いで肴と一緒に出す。
暇で日本酒用の小さなグラスあるじゃん、あれをちょこちょこ買ってきてもらったので結構種類がある。
今日は気分というか何というかで薄紅色で花が彫られてあるそれに決めた。
紅はそんなの気にしないけど俺としてはそんなとこに気を遣うのが好きなのだ。

「夜飯何がいい?」

「なんでもいい」

「それが一番困るんだってば!」

全国の主婦の皆さんは一度は経験したことあると思う旦那さんからのこのセリフ。
新婚さんだったら旦那さんの好きなものを食べさせてあげたいから、熟年夫婦だったら考えるのが面倒だから。
俺は限りなく後者に近いのだが一応と言うか新婚なのだ。

「朝も昼も夜も自分で考えるからいい加減面倒なんだよー」

「・・・じゃあお前」

「・・・中年オヤジじゃないんだからさ」

いや、紅としては深刻な問題なんだろうけどこちらからすればあきれるしかない。
一番好きな食べ物が目の前に居て待てされてるんだから可哀想と言えば可哀想なんだけど。

「あー、麺食いたい」

「わかった」

この場に流れた少し微妙な空気に紅も気まずさを感じたのか知らんが少し唸るとリクエストしてくる。
それに頷いて頭の中に思い描いた料理を作るための材料を冷蔵庫見ながら確認する。
足りないものは黒羽さんに電話して買ってきてもらう。

「おい、透!酒」

俺は酒じゃねぇと心の中で呟きながら俺いい嫁だななんて考えながら旦那様のもとへ。
今は寒い時期なのに冷蔵庫でキンキンに冷やしている。
あれか?冬に暖房付けて炬燵に入りながらアイス食うのがいいとかゆうのと一緒なのか?
まあそれなら俺も小さい頃よくやっていたしあのいい感じの気持ちは思い出せる。

酒を注いでやって紅の持ってきた宿題に手を付けることにする。
普段勉強なんて死ぬほど嫌いだけどすることがないのよりはいいのでおとなしくする。
時々わからないのとかあるけどそこは紅が教えてくれるし。
人並みとも言えないけど少なくとも多少勉強すれば赤点は免れる程度なので決して馬鹿ではないと信じたい。

「あ、紅!これって公式3に当てはめればいいんだよな?」

「馬鹿、2の方が簡単だろ。ちゃんと見ろ」

「・・・はーい」

馬鹿ではないと信じたいと思った後の馬鹿に思わずしょんぼりするけど紅に言われては納得するしかない。
まあこいつが出来すぎるのも問題なんだろうけど。

宿題がひと段落したところで黒羽さんが頼んだものを買ってきてくれた。
まあいい時間になっていて夕飯の準備をそろそろしよう。
一礼して去っていく黒羽さんの背中を見つめながら思って作る順番も考える。
脳内でシュミレーションが終わるとキッチンへと向かった。

「あ、紅勉強ありがと。今から夕飯作るからもう少し酒飲んどけ」

「わかった」

もう既に難しそうな本を片手に読書に集中していたので声をかけたのは失敗だったかと思うけど気にしないことにした。


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