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血の臭いが脳を異常にさせているのか興奮させているのかしらないが瞳孔が開いててまじで怖い。
やめろと必死に力を込めるも残念ながら効果はなし。
腰から力が抜けてへたり込んで、体育座りでもするような姿勢になれば足首を持ち血が流れるそこへ顔を近づける。
もしここでこの事態に気付いたものが助けに来たとしても吸血種だとしたらもともこもない。
人間だとしても吸血種の力に敵うのかどうか。

「っ、やめ・・・」

「あぁ、いい匂いだ・・・喰いたいっ!!喰いたいぃぃ!!」

裏声も交じって叫ぶように狂気染みた声で叫ぶやつに生理的嫌悪や恐怖を覚えるも顔は指は血に触れてしまった。

その瞬間、じゅわ、という音と何かを焦がしたようなへんなにおいがする。
これは料理しているとき誤って炒めすぎたときとかにする音であり臭いだ。昔料理始めたばっかの頃の失敗談として覚えている。

「あ゛、あ゛ぁぁぁぁっ!ひぃ、いあ゛ああああ!!」

俺の血に触れたところから焦げたように黒い何かが広がっていった。
やがて肘あたりまでそれが覆い、そこで広がりは止まったが見ていて気持ちのいいものではない。

相手は俺を襲う気力などもうないのだろうから誰かに知らせたほうがいいのではないだろうか。
このまま逃げたほうがいいのだがこの異常な事態に対して思うこともなく事態の解決だけを急ぐ自分。
むしろその異常なまでの自分の冷静さに驚くが今はどうでもいい。

そうこう考えているうちに目の前のこいつは気を失ったそうだ。
黒いしみはそこにあり続け、痛々しい痕を残している。

どちらにしろこの血は紅とか強い人以外は触れられないのだろう。
むしろ毒となって蝕んでいく。
きっと今回は指先に少し触れたぐらいだったから(もともと出血量もそこまで多くなかった)無事だったのだろう。

この事態にため息を吐いたところで足音が聞こえた。
さっきの断末魔のような悲鳴にだれかが気づいてくれたのだろう。
出来れば先生かカイン先輩とか紅とかであったら嬉しいのだけど、どうだろうか。

「・・・誰?」

「カイン先輩、ですか?」

聞こえた声に聞き覚えを感じ、逆にこちらから質問すると曲がり角から勢いよく顔がでてくる。

「透!?ちょ、君・・・って、っぅ!!」

「あ、血出てるんで近づかない方が」

「その強烈な血の臭いで俺は来たんだけどね!!」

いつもと話し方が違う。
なんというか粗暴になっているというか余裕がないというか。
まあ原因は俺だから何とも言えないが。

「、こっちの処理は任せて」

「じゃあとりあえず教室行ってきていいですか?宝具、体育だったんで一部外してるんです」

「わかった。ちょっと待って、黒羽がそろそろ来るから」

「え?」

「君の護衛のために学校の近くに待機してるの。紅とか俺とか一部の先生が緊急事態に呼び出すために」

「へー。便利ですね」

「便利ですねじゃない」

「はーい」

そんな風に話していれば全身黒づくめの顔も見えない人たちがぞろぞろと。
気を失っている奴を担ぎ上げる奴、俺とカイン先輩を護衛する人。
やっぱりこのお姫様扱い、なれませんね。


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