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最初に戦うのは正樹のグループでサッカー部もその中に居たので手ごわそうだ。
吸血種との割合はほぼ同じなので特にこちらが圧倒的に不利な状況になることはなさそうなのが唯一の救い。
それでもこちらは休み時間のお遊戯程度でしかサッカーをしてきてないので不利なことには変わらない。
一人でも経験者入ればよかったのにと思うけど仕方がないのでとりあえず頑張ろう。

「よし、フィールドに入れー。挨拶」

「「よろしくおねがいしまーす」」

向こうでは詩葵のグループとシアのグループの試合も同時進行で行われるらしくこちらと同じ様子だ。

笛の音とともに一斉に走り出してポジションにつく。
俺はサッカー用語とかよくわからないけどとりあえず攻めろって言われた。
よし、頑張ろうと気合を入れたところでサッカー部の奴が既にボールを蹴って走り回っている。
守りの奴らが二人で阻止にかかり、それが功をなしたのかこちらにボールが回ってきた。
一回勢いを止めて方向転換、走り出す。

正樹は守りらしく俺の方に勢いよく走ってくるがすぐに斜め前の奴にパスをする。
目当てのボールが違う場所に行ってしまったので正樹は少しムッとした顔をして、それでも楽しそうにボールを追いかける。

「負けないからねー!」

そうやって叫ぶ正樹に背を押されたらしく他の敵チームの奴らもボールを追いかけていく。
平和だなあと思いながら走ったおかげで温まってきたので俺もすぐにパスがとれるように走っていく。

「桜月ー、とれよ!!」

「まかせろー!」

パスをしようとこちらにボールを蹴ってこられたが無駄に速くて地面からボールが浮いた。
眼前に迫りくるそれに驚いて思わず顔を庇うように右腕を動かした。
残念ながら俺はリフティングが苦手で頭で?額で?ボールを受け止めるのは厳しすぎる。
普通のパスだと思ってたし俺のことマークしてる奴らが少なかったから余裕こいてたのかもしれない。

「・・・、っ!?」

右腕に勢いよく当たったそれに、昨日血を飲まれて少し体が怠いことも悪さして倒れてしまう。
地面は砂利なので足が擦れて少し血が出てしまっている。

「桜月!!大丈夫か!?」

「おー、なんとか」

「よかったー・・・って血!!」

「保健室行ってくるわ」

俺に無理なパスしてきたやつが駆け寄ってきて手を差し伸べてくれたのでそれを支えに起き上がる。
やはり少し引きつるような痛みと砂利のついた不快感と違和感。

いてぇーと声をあげながら周りを見るとこちらを凝視する奴らが数名。
その中には詩葵の姿も含まれていて、よくよく考えてみればこちらを見てるのはすべて吸血種だ。
あ、やばいと思って逃げるように保健室へと行こうとした。

「おい桜月!足怪我してんだろ?保健委員に肩かしてもらって行けよ」

「あ、じゃあ・・・」

見たところさっきこっちを見てはいなかったやつだからたぶん人間だし大丈夫だろう。
近づいてきた俺より少しだけ背の高いそいつの肩に手を回すと行こうかと声をかけられたので頷く。
お礼を言えば笑って災難だったなと言ってくれたのでほんと優しくて良いやつだなあと思った。


グラウンドから校舎に入ったところでいきなり保健委員の足が止まった。
もしかしたらここから保健室への行き方がわからないのかもしれない。俺もわからないけど。

「こっから保健室ってどう行くんだっ―――」

さっきまで良いやつだと思ってた保健委員の奴がいきなり肩を支えてくれた手を放してくる。
バランスを失って倒れそうになったところで腕を掴まれて壁に押し付けられる。

「いい、臭い・・・血だ、血の臭いがっ!!」

興奮した様子で目が大きく開いている。
瞳孔こそ開いてはいないがその不気味に彩られたその目は十分に危険な存在ということを主張している。

逃げようにもいかんせんこちらは怪我人のうえ人間、相手は吸血種。
さっきこっちをみてなかったからとか云々言ってたけどただ単純に俺の視界に入っていなかっただろう。
自分の馬鹿さ加減に思わず顔を歪めた。



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