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鋭い牙が肌に食い込む。
ここ最近で慣れてしまったこの痛みとともにかすんでいく思考。
一番最初にがっつかれたけどそれ以降は頻度もあまり多くはなく血もそこまで多くは吸われなくなった。
もう血は止まったというのに傷口を舐め続ける舌の生々しい感触に震えて半ば無理やりに引き剥がす。

「・・・んだよ」

「もう吸い終わったんだろ?眠いからやめろ」

言い訳するように早口で捲し立てると少し不満そうな顔をしながらも俺を寝室まで連れて行ってくれる。
そのまま最近では恒例となってきた同衾。
今は冬場なのでまだいいけれどこれが夏だったら流石に苦しいなとも思う。
そんな未来もこいつと共にいることだけは決定事項で、それだけが俺が選べるもの。

「おやすみ」

「ん」

腕が頭の下に敷かれもう片方が俺の腰を引き寄せる。
全身で守ってくれているようなこの体制は少し微妙な気持ちになるとはいえまあ好きではある。

疲労感ですぐに眠りに落ちる。
数学の課題が終わってないけどそれは明日考えよう。




案の定、結局一問も解かなかった驚きの白さよろしく真っ白なプリントは翠によって救われた。
何回もお礼を言って今度休日は料理教えてやるよと言えば喜んだのでよかったよかった。
いつも通り二人で甘い休日を思い描いていたらしい詩葵ざまぁ。

「おーい二人ともー、次体育だから早く行かないと着替えの時間なくなるよー」

「あ、そうだった」

「じゃあ、昼な、翠」

「んー、頑張ってねー」

手を振る翠にこちらも振り返すとシアが俺の体操着が入った袋を持って正樹と一緒にいた。
手渡されたそれに少し申し訳なさも感じるが紅に言われてやっていることなのだろうから俺が口出してはダメだろう。
むしろそれで怒られることがあれば本当に申し訳ないし。

「ありがと」

「いえ、それより急ぎましょ?」

「そだな」

軽く走りながら更衣室へ急いで着替えを済ませる。
いつも体育のときは邪魔になるのでネックレスと指輪を外してばれない様に隠す。

外へ出ると案の定風が強くて冷たい。
布で隠されていない頬を刺すような痛みが襲ってくる。

「全員四列横隊に整列!!」

ジャージでなるべく顔も隠れるように引っ張りながら体育委員の号令に倣い列を形成する一部になる。
先生の指示に従い準備運動をすると寒さに少し慣れたのもあるが少し暖かくなった。

今日は外でサッカーらしく、普段は座学より体を動かすのが好きなので嬉しいけど今日は寒いので遠慮しておきたいところだ。

「チーム分けを行うが、四チームにわかれる。前から番号言ってけ」

俺は三のグループ、シアは一、正樹は四、詩葵は二と綺麗に分かれてしまった。
校庭は無駄に広いので走る量は増えそうだが今は動かない方が寒さ的に辛いので有り難い。
一緒のグループになった奴らとポジションを適当に決めて五分程パス練習してから試合が始まった。


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