シアはあれからご主人様に俺の世話及び警護を任せたらしくて前以上にべったり状態になった。
まあ友人として普段からけっこういつも共に過ごしていたのであまり変わりはないけれど。
でも部屋の前まで送ってもらって鍵を閉めるまで扉の前に立っていたりするのはあんまり慣れないものだ。
今日も今日とて帰りの挨拶を済ませたら一目散に俺の席に飛んでくるように来た。
まだ帰りの支度が終わっていないのでちょっと申し訳がなかった。
「あー、ごめん。ちょっと待って」
「はい」
詩葵はもういつも通りに接してくれてるしこの首輪とかも慣れてしまえばどうってことはなかった。
でも風呂入るとき服を脱いだ時なんかボーっと見てしまうけれど。
「透ー帰ろーよ」
「はいはい」
正樹はさっきまで寝てたからか大きな欠伸をしながら席に近づいてきた。
詩葵は一目散に翠の教室に行ったのですぐ戻ってくるだろう。
「あ、待たせたー?ごめんね」
「やっほー翠。帰ろー!」
詩葵に連れられてきた翠も揃っていつも通りのメンバーで帰路に着く。
吸血種の目線が気になるけれど俺の事なんかは視界に入っているわけもない。
この宝具の効果まじすげーとか思いながら今のところきちんと守られている現状に安心。
惹きつける力だけを持っているのではなくきちんと対処出来る力が欲しかった。
だれかに守られるんじゃなくて、せめて自分の身は守れる力を。
ひっそりと吐いた溜息は誰にも聞こえてなんかいないんだろう。
そのままいつも通り詩葵たちが先に降りて正樹と別れてシアにすごく見守られて。
「送ってくれてありがとう」
「はい!あ、今夜会いに行くと紅様が言っておられました」
「わかった」
「詩葵には今日翠の所に泊まってと言っといたのでごゆっくり」
「?・・・了解」
よく分からないが気を使ってくれているらしい。
そんで扉を閉めるまでじーっとこちらを見ているので早々に扉を閉めた。
まあ、確かにいきなり吸血種の王が部屋に居たらビビるというか普通に怖いよなあ。紅先輩と詩葵って会ったことないだろうし
それに機密的なこと話されるかもしれないんだしあまり事情を知らない人が居たら困るんだろう。
ガチャリといきなり玄関の方から音が鳴った。
鍵を持っているのは詩葵と紅先輩ぐらいだ。詩葵が荷物を取りに来たのかもしれない。
でもたぶん先輩だと思うけど。
そんな予感は見事に的中してあの低い男らしい声は先輩だ。
「夕飯食べましたか?」
「これから」
話は案外早く終わるらしい。
今日はもう部屋で適当に作って終わらせようと思っていたけどやっぱ食堂行こっかな。
ソファーに座る先輩に熱い緑茶を出してみれば初めて飲むが美味いと言っていた。
意外と先輩たちの居た国は此処の伝統的な料理や飲み物は口に合うらしい。
この国も人でも梅や昆布などは好き嫌いが分かれるものだし。
「透、血を飲ませろ」
「・・・・は?」
「は、じゃない。俺は吸血種だ」
「あー・・・そう、ですよね」
そうだ、あの時契約もしちゃったんだよ!
そりゃ王が花嫁居るのに他の奴と契約なんてしちゃダメなんだろうけどさあ。
翠は平気だなんていうけれど噛まれるんでしょ、絶対痛いよ。