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目の前に転がっている問題は全て俺なんかの力じゃ解決できるもんじゃなくて。
何もしなくていいという安心と少しの無力感、そして俺の人生は結局流されるものなんだなぁと思った。

「とりあえず今まで通りの生活を続けてればいい」

「わかりました」

「たまに会いに行く」

連絡先を交換してクラスを教えてもらって合鍵渡して渡されて会話終了。
共通の楽しい話題何てこんな重苦しい雰囲気で見つかるわけもないし。

とにもかくにも詩葵とも普通に接して問題はないと言われたので部屋替えとかもなさそうだし一安心。
クラスの奴等と会話できなくなったりいきなり襲われるだなんてマジで困るし。

部屋から出て言った先輩を見送り俺はベッドへ戻る。
なんだかどっと疲れたというかなんというかもうやる気がでないというか。
詩葵に連絡してもう大丈夫だよと言ってやりたいんだけどそんな気力ももうない。

目を閉じるとまるで泥に沈み込んだように意識が遠のいた。



最近はよく目が覚めると夜だ。
昼寝が長すぎると言うのが問題点なんだけれども昼寝でわざわざアラームを鳴らすのも面倒。

でもまだ眠い。
体は睡眠を欲していて目を閉じればまだ眠っていられそうだ。
そうしようかと思ったけれど流石に昼飯も夜飯も抜きなのはいけないだろうと体を起こそうとする。
でも力はまったく入らずに頭が少し浮いてポスッとまたベッドに落ちる。

これはまだ寝てろという事なのだろうか。
でも明日は学校があるので明日もこんな状態だったら困る。

とりあえずいつもの時間にアラームをセットしてそのまま目を閉じる。
前は異常なほどにあの湖に行きたくなって今度は異常なほどに体が動かなくなって。
自分の体なのに他の奴に操られているような気がして気分が悪い。

それでもこの眠気には勝つ事なんかできなくて、数分前に居た夢の世界へと戻っていった。



「・・・、と・・・る!!透!」

「あ゛?・・・詩葵、か」

ベッドの脇に立っている詩葵が俺の体を揺すっていた。
寝起きは結構悪いので少々乱暴な声が出てしまったけれど悪意は一ミリもなかったのでまあいいだろう。

「おはよう。どうしたの?」

「いや、いつもの時間に起きてなかったしアラームも鳴りっぱなしだったからさ」

「うわまじかよ・・・ごめん、ありがとう」

笑っていたけれどちょっと不自然だった詩葵。
でもまあこの前俺からなにかを感じ取って逃げてたからそれのせいだろう。
今は何ともないことを確認して一安心ってところかな。

視線が胸元に輝くネックレスや腕輪に向けられていたけれどそこは気付かないふりをする。
知りたければ聞いてくるだろうし秘密を守ってくれれば普通に教えるし。
ああでもその場合は紅先輩はカイン先輩にこの人たちに教えましたーって言わなきゃいけないのだろうか。

部屋を出ていく詩葵に早くしなくてはと着替える。
今日のお弁当はいつもより頑張ろうと、でも時間はいつもより少ないのだけれど。

ささっと出汁巻き卵と金平ごぼうを作って油の温度を見て肉を揚げれば唐揚げの完成。
弁当の隅にプチトマトやレタスなどの野菜を入れてポテトサラダも詰める。

「・・・後はおにぎり」

鮭、昆布、梅、塩オンリーのものなど作る。
ちなみにシアが梅おにぎりを凄い気に入っていた。でもシアの故郷では梅おにぎりなどなかったらしい。
文化が違うので食について教えてもらおうかと思ったけれど残念ながら作れないらしい。
まぁその後慌てて故郷の母にレシピでも送ってもらうと言っていた。

少し慌てて作ったものではあるが上手くできたと自信を持って言える料理に大満足。
でも朝飯を食い逃すわけにもいかないのでさっと弁当箱を鞄に詰めて火元を確認してから食堂へと向かった。


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