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「他に何かあるか?」

「・・・・貴方って、確かシアのご主人様でしたっけ」

「シアを知っているのか?」

「知ってるも何も同じクラスです」

納得したように頷く彼に話をふったはいいが何を話そうかと悩む。

「えっとー、今更ですがお名前は」

この前名前が紅なのは知ったけれどぶっちゃけ言うと覚えてない。
だれだれの執事ですとか言ってたけど・・・誰だっけ。

「神崎紅(かんざき こう)」

「そうですか。えと、神崎先輩でいいですか?」

「紅で良い。・・・お前の名前は?」

「え?」

思わず聞き返すと少々気まずそうにもう一度名前を聞いてくる。

「桜月透です。聞かされてなかったんですか?」

「カインの野郎何も言わないでいきなり連れてきやがったんだよ」

そりゃ災難でしたねー。
俺もいきなり知っているようで知らない人が部屋に入って来たからびっくりしたよ。


「で、これからなんだが」

早速本題に入ったようで俺もこれからの事については不安があったので背筋を伸ばして聞く姿勢に入る。

「はい」

「花嫁を奪おうって輩が居る」

「俺が、愛子だって知っている人がいるんですか?」

「昨日の儀式に居たメンバーと元老院の奴等、俺の両親とお前の両親には話している」

まぁ、絶対情報は漏らすなと厳守するように言っているらしいが。
俺の両親はまず愛子だとか王とかそんなのに興味自体がないからばらすことはまずないだろう。

「だがいつばれるかわからないし。宝具が示したとはいえ俺を王と認めない奴等もいる」

それはそれは大変なことで。
でも俺も狙われていて紅も狙われているとかすっごい面倒な状況だ。
平和で平凡な人生を望んでいるからこそ神様は俺を愛子に選んだのだろうか。
だとしたら神様とかいう奴は相当性格がねじ曲がって意地が悪い野郎なのだろう。

「えと、対策的なのは?」

「ない」

え、なにそれ。
そりゃ確かに公にしていないから堂々と守るわけにもいかないけどさぁ。

「お前が二十歳になったら公式に発表されることになる」

それまでの四年間がんばれーってか?
だって、今はまだいいけど先輩が卒業した後の一年間は一人ってことじゃないか。

幼稚部からあるこの朧月学園。
とは言っても幼稚部からこの学園に入っているのはただの金持ちだ。
政府が決めた方針で俺らの住む地域の高校生にあたる年齢の子供はこの朧月学園に入学させられる。
幼稚園やら小学校中学校は他の所で良いけれど高校生からは決まっている。
大学は本人の能力に合わせて決められるので深くは決まっていない。

まぁこの地域の男子を全員この学園に集めるのだから相当生徒数は多い。
とは言っても吸血種は力の暴走やら狩りに失敗して命を落とす奴等も多いらしい。
人間もたまに気の狂った吸血種に襲われて抵抗もできぬまま死んでいく奴等もいる。
生き残った奴等だけが通えるので悲しきことだが小さい頃からの友達でももうここに居ない奴等もいる。

そしてこの学園にも居るように少々危ない系の吸血種が居る。
人間の血を自由に吸えないことに不満を持っている奴等だ。
また多くの人が集まる場所なので様々な感情がないまぜになって人間でも危ない系の子もいる。
その場合後ろに強い吸血種が居たり実家の権力が無駄にすごかったり。

いくら学園で指導されても危ない奴等は消えてい無くならない。
むしろ抑圧されている不満が爆発して人間を襲ったりするなど被害は年々増大している。

そんな最中花嫁と言う吸血種の王の人間バージョンのような人間が現れたらどうすると言うのだろうか。
吸血種を狂わせるという極上の色香を持つ人間だ。真っ先に狙われるであろう。
その上花嫁を食い殺せば危険思想の吸血種の活動を更に活発にさせるのであろう。

とまぁ、なかなかバイオレンスな世界なんですよ。

嗚呼悲しき。
俺はもう一生ここから出たくなくなってきたよ。

うん、皆わかってくれた?
俺の中々スリルすぎるこれからの人生。



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