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目を開けるといつも通りの日常。
そんな願いを込めるものの腕に、足に、首に、指に絡みつく金属の熱が纏わりつく。

風呂に入る時など邪魔なのだがどうすればいいのだろう。

昨日は理事長やら黒羽やらカイン先輩やら黒髪さん――もとい王やらと話して儀式を行った。
最後におーさまに口付されてから意識が遠のいて、たぶん今まで寝ていたのだろう。

今日は日曜日。
喜ばしいことにいつまでも寝る(現実逃避)ことができるのだ。

というわけでもう一眠りしようかと思ってもう一度体を横たえる。

「具合は?」

「・・・・・・・・・・」

何故お前がいるとか言いたかったけど昨日あのままこの部屋に居たのだとすると納得だ。

「まだ具合が悪いのでもう一眠りしたほうがいいと思ワレマス」

「そうか、調子はもういいのか。適当に朝飯買ってきた」

「え?鍵はどうしたんですか」

嘘は簡単に見破られてまぁ仕方ないかと次の報告に驚く。
自分の鍵はいつもベッドの脇にあるテーブルに置いてあるし、今現在ここにある。

「理事長にもらった」

「そーですか」

理事長はなんだかポワポワ(オノマトペでしか表せない)してて腹が読めない。
俺の近くに居て何にも影響がなかったから相当力が強いと思う。まぁまず学園の理事長なんて大層な役柄についてるし。

仕方がないと先程横たえた体を起こしてベッドの脇にあるスリッパを探す。
履いて立ち上がろうとしたら目の前に影が出来て思わず見上げるとそっと掌を差し出される。

これは、手を取って立ち上がればいいのだろうか・・・あらまぁ紳士。

「・・・ありがとうございます」

一応礼は言ったのだがそれに対する返事はなく前を歩いて扉を開いて俺が通るのを待っている。
ああ、この人が生まれ育った地域はレディーファーストとやらが主流なんだっけ。
・・・・俺女じゃないけどさ。

机に乗ったスーパーの袋のなかから取り出すと炒飯と鮭弁当と唐揚げ弁当があった。
鮭にしようかなーと手に取ってレンジでチンする。

「あの、もう食べましたか?」

「まだ食べてない」

「じゃあどっちにしますか?」

もしかしたらカイン先輩も朝まではいて3人分買ってきたのかもしれない。
残りの二つを両手にとって見せたらどっちもときた。
吸血種はエネルギーが沢山必要なのだろうか、詩葵もよく食べるのを思い出す。

その後は二人とも話さずに黙々と食べていた。
普段はよく喋る奴等と飯を食っているためになんだか違和感と言うかなんというかがある。
でもまぁこんな空間も悪くはないのかもしれない。

「ごちそうさまです」

そう言うのは俺だけでさっさと空になった容器をゴミ箱に放り込んだ。


ソファーに腰かける。
そのすぐ隣に黒髪さんが座る。
何故だ、他にも開いているのにと思うが口にはしない。

「・・・あの、これなんですけど」

「ああ」

とりあえず宝具についての文句は言っておこうと口を開く。

「風呂の時とかすっごい邪魔なんですけど」

「足のものと腕のは駄目だがネックレスと指輪は外していい」

「はぁ」

そりゃ足と腕のはそれほど邪魔になりはしないけどやっぱり風呂入るときもってなんかいやだ。
それに食事を作るときも手になんかあると嫌だし。まぁ指輪は外していいらしいが。

「まぁ襲われたくなければ我慢してろ」

「・・・はい」

そう言われればもうつけているしかないのだろう。
俺だってそんな襲われたいだなんて馬鹿な願望持っているわけじゃないし。


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