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そして夕方、一応詩葵には帰ってくんなって電話をいれといた。
何でかって言うのはもう身に染みて分かっているだろうから返答は了解の意と謝罪だった。
気にするなと言ったしこっちも気にしてないと言ったけど声は暗く沈んでいたので翠に慰めてもらうのだろう。

もう外に出る気はないし食材はまだあったからセーフだ。
そしてただいま野菜を切りながら早く宝具とやらがこないかなーと待っている最中である。

昼飯も面倒臭くて適当なものしか食ってなかったので腹が早くから空いているのだ。
でも自分の分だけなのに手の込んだものを作るのはそれこそ面倒なので簡単にパスタとスープ。

後2分程で茹で上がるなーとセットしたタイマーを見る。
と同時に呼び鈴の音にタイマーが鳴ったと同時にとかじゃなくてよかったなと思いながら早足に向かう。

「こんばんわ」

「こんばんわ、ご自由にどうぞ」

カイン先輩にさっと告げてそのままキッチンへと戻る。
ちょっとびっくりしてたけど匂いで気付いたらしく大人しくソファーに座る。

「透くーん、夕飯のごちそうは?」

「・・・・すればいいんでしょう」

そして初めて人数確認。
カイン先輩、何回か見たことのある理事長、そして黒髪の―――道案内の人。

「三人だけですよね。後から増えるとか無しですよ」

「うん、後元老院のほうから五人来るらしいけど時間かかるって言ってたし」

その頃には食べ終わってるかもーなんて言ってたのでとりあえず三人分追加。
とはいっても一人分だけ茹でるのはもったいないのでもともと二人分作っていたので倍にするだけ。



「不味くてもしりませんからね」

正樹たちの好評の高かったものだから万が一にも吐くほど不味いだなんてことはないが初めての人は緊張する。
その中には理事長も入ってると言うからなおさらだ。

「大丈夫だって」

「うん、美味しいよ」

理事長からの零円スマイルでとりあえずホッと胸を撫で下ろす。
けれど隣の黒髪さんは黙々と食べ続けている。

「美味しい!良いお嫁さんになるよ」

「そう言うのは半径一メートル以内に入ってからにしてくれないですか」

カイン先輩は今俺の座っているところから一番遠い。
無駄に広い内装なので距離だけは十分にあるのだ。

ちなみに黒髪さんはまさかのお隣さんだ。
そんで理事長は三人掛けの場所を華麗に独り占めしている。

「あー、はい。すいません」

へらへら笑う先輩に適当にかえす。

「・・・良い嫁に、なる」

「は?」

唐突に喋る黒髪さん。
思わず目を点にさせると真面目な顔でこちらを向いている。

「久しぶりだな」

そしてまた変わる話題。

「あ、その節はお世話になりました」

「月が綺麗だったな。案内すんの面倒だったけど」

何ていうか、この前と口調が違う気もするけどあれは警戒してたんだろう。
まぁそう考えると改めて俺不審者だなぁと思う。

「あーすいません」

「君たち知り合いだったの?」

不思議そうに口を挟んでくる理事長にどう返事すればいいのかわからなくなる。
知り合い未満変質者以上?え、何これ最悪じゃん。

「いや、違います」

考え込んでた俺の代わりに黒髪さんがお返事して下さったので俺は適当に同調するように頷く。
でもこの答えだとなんでこの前はどうとかそういう話が出てくるのかという疑問が出てくるのだろう。
そんな予想を裏切って何も聞かない理事長。
まぁ、上手く答えられる自信なんてなかったからむしろありがたい話なんだけれどさ。


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