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「好きだ」

「……っ、」

「そう、言えばいいのか?」

俺も、なんて都合のいい返事をしようとして止まる。
俺は言葉を強要していたのだ。

「あ、ごめ…」

「お前から」

言えよ、と紅が呟く。
もっと求めろと、逃げるなと言われる。

これが、この屋敷に来る前に翠に言われたことだ。
好きになるのが怖いのだ。

「俺が信じられないからか?」

「違う!」

でも、紅は俺の事好きじゃないくせに。
何を考えているんだろう、俺は。
たった今信じられると言ったばかりで、本当に面倒な人間だ。

「嘘つき」

「そんなこと、言わないでよ」

深く深く、紅の言葉が突き刺さる。
後ろめたいことがあるからこその衝撃だ。

紅からの言葉がなくても、もう心は動いているからこんなにも苦しい。
認めないだけで確かにある想いが、認めてくれと叫んでいるのが体中で鳴り響いて、どうすればいいんだろう。

「…俺嘘つきだし、面倒くさいよ」

「そうみたいだな」

笑う。
優しくて、愛おしい顔をしてる。

嗚呼、どうか、どうか。

「……紅が好きだよ。好きだ!…好きなんだ」

俺を好きになってください。

本当に本当に好きなんだ。
紅は求めろと言った、じゃあ求めたら俺を好きになってくれるんだろうか。

俺は、紅に好きになって貰いたい。
それがこじれまくって馬鹿みたいに悩んでいたんだ。

求めろと言うのなら、心から彼の愛を欲しているのだからその衝動のまま口を開くだけだ。
今まで抑え込んでみないふりをしていたそれらが、遂に来た解放を喜び自由に喉から言葉が零れていった。

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