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この学園のクラス分けは頭の良し悪しで決められていない。
吸血種の力の強さでも分けられてはいない。
だから基本的に平等に分けられている。

しかし、それだと相手の力がわからないというところが残念だ。
まぁ、それだから俺の頭が悪いことはバレていないので嬉しいのだけれども。


「ねぇねぇ、編入生の子かーわいいねぇ」

「そーだな」

「・・・・・透の反応つまんない」

「いつもの事だろ」

拗ねたように言うけれども興味が無いことは途端にどうでもいいと判断してしまうのでなんか疲れた。
隣でそれでもギャーギャー言い続ける正樹を詩葵がなんとかおさめているけれど一向に機嫌は直らないようだ。

「・・・・後で翠と話してくればいいだろ」

「んー」

仕方がなく適当に言ってやればまだ拗ねているようだけれども静かになった。
クラスの奴等も正樹の騒ぎっぷりに苦笑していて、例の無気力〜な奴らは辟易して空を見ている。
ちなみに編入生はちょっと驚いていたけれども周りの奴等の質問攻めにがんばって受け答えていた。

その後もあれこれ話していると先生が入って来たので静まる教室。
急いで教科書やらを用意して椅子へダッシュで向かっている。
そんな奴らを横目に授業はちゃんと受けないとなぁと伏せていた体を起こすのであった。


             *******


「翠のとこには来た?」

「ううん、こなかった…」

しょんぼりする翠を隙があらばといちゃつきたいのか優しく髪を撫でる詩葵。
このバカップルの事はもう放っておこう、うんそれが最善策だといつも通りの結論に至って終わる。

「あ、そう言えばなんかエレフォン誰かの執事だって言ってたよね」

「確かに・・・一体誰の、」

「神崎紅様ですよ」

いきなり入って来た誰かの声に振り返ると話題に出ていた人物が立っていた。

「エレフォンか…どうしたんだ?」

「もし宜しければご一緒させていただければと…」

こちらを伺うように、不安そうな目に思わず庇護欲が湧いてきたというかなんというか。
俺の中の少ない女性ホルモンが母性本能を訴えているというかなんというか。

「「もちろんいいよー!!」」

正樹と翠の元気な声が重なって結構な音量になったので数回目をぱちぱちさせるとにこやかに笑ってありがとうと言われる。
少し動いて人一人分入れる様にするとそこにそっと入ってくる。小さな動きがとても優雅で凄いと思う。

「えと、お名前を伺ってもいいですか?」

朝、俺らは質問攻めに行ったわけでもないし翠にかぎっては別クラスだと納得して順番に名乗っていく。
下の名前で呼んでもいいと言ったのに苗字で呼ばれた正樹と翠は些か不満そうですぐに名前呼びを強制された。

「え、あ…翠、と正樹…で、いいですか?」

「いいよー!!」

元気に笑う二人と小動物を思わせるシア(ならば俺らもシアでいいと言われた)に少し癒される。
正樹は図体は一緒位で別に顔立ちは整っているけれども女っぽくない。それでも可愛いと思うのは幼い性格だからだろうか?
翠は言わずもがな小柄だし女顔なので可愛いと思う。
シアは華奢だが意外に背が高くてちょっと負けたかもしれない。

「そういえば何で外で食べるの?」

学食はと聞かれて困ったように笑う。

「誘われたのですけど、ちょっと怖かったので遠慮させていただきました」

それで購買に行ってきたんですと現在食べているサンドウィッチを見せる。

「あー…まぁ、気を付けろ」

詩葵がドンマイとでも言うように背中を叩く。

多分だけれどシアを誘ったのは手が早い奴等と言うかなんというか、欲求不満な奴等だろう。
たまに学園内で契約を交わしてもいないのに血を吸う奴等が居て、その上強姦までするものだから風紀たちも学園側も手を焼いているらしい。
吸血種でも顔立ちが整っていない人達もいて、そいつらがそんな事件を起こす。悔し紛れの犯行なのだろうか?
顔立ちがどうだろうと力の強さは人間よりもあるし凄く強い場合もある。
だからこそ面倒なのだ。

「はい。…あの、明日もご一緒させていただいても宜しいでしょうか?」

「いいよ!!」

ね、と言われて断る理由はない。
あぁ、明日から弁当の量をもう少し多くしなければいけないなぁ。

「じゃあ明日から昼は俺の手作りになるけどいい?」

「あ…皆さん透のお弁当を食べていたんですね。でも、宜しいんですか?」

「いいよ、一人増えたぐらいじゃ変わらないし翠も作ってるし」

「そうなんですか!…では、甘えさせてもらいます」

そう言って笑うシアに思わず頭を撫でる。
吃驚したらしいけれどそのまま大人しくしてくれたのでよしとする。




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