「お前の王になれなかったよ、俺は」
そんなわけがない。
ならば何故、あの時リカルドを守ったのか。
「お前は優しいから。神咲紅の攻撃があたるのかと思ったんだろう?それは愛なんかじゃなくて、ただ助けたいと思っただけ」
「・・・・そう、かもしれない」
「俺以外で王になれる奴は、ただ一人」
嗚呼、リカルドこそ優しいね。
意地っ張りな俺が、王を定められるように。
そして言い訳できるように、そう言ってくれる。
リカルドは王になれない。
なら、残りは紅しかいない。
だから俺は紅を選ぶ。
愛とか、そんなんじゃなくて。
「リカルドこそ優しいよね」
「透は案外意地っ張りだ」
「そんなことないよ」
「そんなことある。素直じゃない」
だから、神咲紅を好きって言わないんだ。
そう呟くリカルドは無視をして。
「リカルド。俺はリカルドのお父さんを止めたい」
「ああ、協力しよう」
本当はこれで終わりにしたい。
でも終われはしなくて、人を滅ぼすだなんてそんなこと絶対にさせない。
俺は普通に生きたかったけど、それはダメだから。
こうして生まれたのだから、俺が動かなきゃいけないことだから。
俺ならきっと、出来ることだから。
「吸血種と人間、愛し合ってる友達が居るんだ。人を滅ぼすなんてこと、絶対にさせたくない」
俺の友人を、友人の愛しい人を、どうか守れるように。
花嫁だからと言ってスバラシイ出来た心を持っているわけでもない。
だから身近に居る人を守ろう。
そうでなければ俺は動かない、面倒くさがりなんだ。
ちょっとだけ、調子が出てきたかもしれない。
なんだか肩の力が抜けてきた。
「リカルド。色々と終わったら俺と友達になってね」
「友達・・・か。それもいいな」
やっと笑ってくれたリカルドの笑顔は、それはもう綺麗で。
俺は嬉しくて、嬉しくて。
いつか俺が意地を張るのをやめたとき。
心の底からの愛が生まれたとき、一番にリカルドに報告しよう。
けじめとしてもそうだし、リカルドはきっと俺の大切な友達になる人だから。