「・・・ねぇ、どうして俺選ばなきゃいけないのかなぁ?」
二人のこと、本当に好きだから。
戦ってほしくない。
それに人間と吸血種で、心底愛し合っている友人もいる。
俺にも大事な人間の友人や家族がいる。
それをリカルドのお父さんが壊そうとしているから俺は、リカルドを選べない。
だけど紅は俺のことなんか好きじゃないから、俺も紅なんか好きじゃない。
もしも俺が花嫁じゃなければ俺のこと愛してくれる男か女とでも結婚して。
大変だろうけど仕事もしてさ、二人で生きていければさ。
それが、幸せって言うんだろうなぁと思う。
けど世界は俺にそれをさせてくれないんだろう?
初代花嫁は強制的に王が決まっていたから、逃げ出しただろう?
俺は逆に決まっていないからこそ、選べなかったんだよ。
だって好きになれない人を本心から愛せなんて言われても、口や身体で嘘をつけたとしても花嫁の力は嘘をつけない。
このまま一生選ぶことのできない花嫁ならさ、
「・・・あの時死んでしまいたいと、本当に思ったんだよ」
「だから、あの時戦闘中のところにきたのか」
「今になって、馬鹿なことしたとは思うけどね」
だけど、恋愛対象としては見られないにしても共にいれば情が湧く。
リカルドのことは人として考え方とか好きになったし。
そのどれも王を選ぶほどのものにならないとしても。
どうしても二人に傷ついてほしくなかった。
「あ、でも俺リカルドのこと選んだんだよね」
「・・・・・・」
「あの、酷いこと言うけどさ。今は自分に言い訳してる訳じゃなくて本心から、リカルドのこと好きじゃないと思う」
「知っている」
「だけど紅も好きじゃない。どっちも選ばないから、神様が決めちゃったのかね」
もう、やだね。
結局俺の意思なんて関係が無くてさ。
ここで決められたから、俺はこの先一生リカルドと共にいる。
友人としての関係ならばきっと、きっと一生仲良くいれる。
だけど、キスして、セックスして、愛を囁いて。
「・・・・・ぁ、」
どうして俺は、リカルドとそれをすることに僅かながら嫌悪感が浮かんだのだろう?
だって、どうして、俺は、
「透、キスをしようか」
「なんで、急に・・・?」
それは唐突に。
たった今胸に抱いた嫌悪感があって、頷けなくて。
それでもリカルドの顔は近づいてくる。
俺は本当に綺麗な顔をしているなぁって思いながら眺めてて。
「・・・・・・?」
「ダメ、だな」
目を開いたままだったからか?
あと数センチのところで止まったリカルドは、
「なんで、泣いてるの?」