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もしかしたら、とんでもないことをしてしまったのかもしれない。
呆然としながら閉じられた扉を見つめる。

何故、リカルドの父が力の行使の権限も持っているかのように振る舞うのか。
俺が力を与えたのはあくまでもリカルドであるのに。

もうリカルドが王なのだから父親なんか簡単に倒してしまえるだろう。
リカルドは、父親の言うことなんか聞かなくても大丈夫。
リカルドは優しいから、きっと俺のお願いを聞いてくれる筈。

なんてことは俺の想像、いや願いでしかないのだけど。
嗚呼もう、不安だけが胸中に残る。

そういえば、そもそも最初はリカルド達は俺を無理やり紅から奪おうとしていた。
それは、一体誰の意思?

もしも父親ならば、リカルドは父親の操り人形。
なんてこと、思いたくはない。

けれど、もしそうならば。
簡単に人を滅ぼしてしまうのか?

嗚呼、こんなこと考えちゃいけないのに、会いたい、今すぐ、紅に。
不安で、怖くてどうすればいいのかわからなくて。

リカルドが人を滅ぼすというのなら、俺にとってリカルドは恐怖の対象となる。
なんたって、俺とて人だから。

仮に世界から人を滅ぼしたとして。
俺は花嫁だから例外となる、と思う。
そうしたら、この世にたった一人の人間ということとなるのか。
正樹や翠が、居なくなってしまう。

人と契約している吸血種は一体どうなるのだろう。
詩葵は、翠の居ない世界で生きていけるのかな。

ああ、それとも俺も殺されるのかな。
紅は俺が居なくなっても、まともに生きていくのだろうか。
そしたら、少しだけ寂しく感じてしまう。

我儘。
わかってるのに、未練がましく紅を想うのだ。

「・・・今、いいか?」

俯いていた俺の前に、リカルド。
びっくりして勢いよく顔を上げたら、心配だと如実に表れている瞳。
その瞳を見たら、やっぱり愛おしさのようなものが溢れてきて。

「ご、めん。ぼーっとしてた」

「一応ノックしたんだが、返事が無くて・・・少し話がある」

「っ、そっか。うん、何?」

「父と話したよな」

「・・・うん」

俺が頷くと、リカルドは気まずそうに目を伏せる。
どうしようか迷って、その手を握る。
紅のものとは違う温もりは、今は俺に安心感を与えてくれる。

「・・・お前は、優しいな」

「どうしたの?急に」

急に言われて、少しだけ笑ってしまう。
一体どうしたっていうのだろうか?
そう困惑する俺にリカルドは言葉を重ねてきて。

「愛してるよ」

「・・・あ、うん」

「お前に選ばれたい」

「?どうしたの、さっきから」

おかしい。
話が繋がっていないし、不安げに揺れる瞳。
なんだか俺まで悲しくなってきてより一層握る力を強める。

「花嫁と言われて困惑したか?」

「え、うん。そりゃあね」

また唐突に話が変わってしまって、慌てて返事をした。

「相手は俺と神咲紅の二人しか選択肢がないからな」

「うん・・・そうなんだよね」

そう、言ってしまったら押しとどめようと思っているのに言葉が溢れてしまう。
言い訳なんかしている自己では無く、リカルドを選んだ時のように本能が語りだしているような感じだった。

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