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あれからどれほど時間が経ったのだろうか。
部屋の片隅で椅子に座っている以外に何も出来ないため、時間の流れがとてつもなく遅く感じる。

無事でいてくれと願うのだが、うっすらとだが地下にいてもその破壊音は聞こえてくる。
建物が揺れる度にクレメンスさんと顔を見合わせ、静かに耐えるだけ。

早く終わってくれと祈る様に両手の指を組み合わせてみた。
想像通り、なんの気休めにもならなかった。

そんな苦痛の永遠を断ち切ってくれるのは、静かに扉が開く音だった。
ばっと顔をあげる俺、警戒するクレメンスさん。
そして俺たちの視界の先には、クリウスがいた。

「お二方共、今現在も交戦中で屋敷の破壊が続いております。外へ逃げた方が良いかと」

「脱出経路は?周りにはどれぐらい敵が?」

多分クレメンスさんも緊張しているのか、張り詰めた空気を放ちながら早口で質問を投げかけた。

「敵は神咲紅ただ一人。ですが、王の候補二人の戦闘は周りに被害が出過ぎてるようです。脱出は交戦中の場所から一番遠くにある裏の出口からにするつもりです」

それに冷静に返すクリウスの言葉に、一気に身体を巡る血液が冷えた。
紅が来ている。

争わないでほしい、それは想いを定められない中でも常に揺れずに思っていたものだった。
しかし、もう手遅れなのか。

同じ王の候補である為、力はさして変わらないだろう。
だから、拮抗しあったままに傷つけ合い続ける。
そんなの嫌だ。

どちらも選べないのは、つまりはどちらとも好きなのだ。
それが恋人や番に向けるものではないから王の力を与える程にはならないのだろうけど、好きにかわりはない。
優しくされたから好きになる、そんな単純なことでいいじゃないか。

「クリウス、俺二人のとこ行く」

「・・・選ぶおつもりですか?」

「選べない、まだ。・・・周りに黒羽さん達は?」

「神咲紅一人。周囲も確認済みでございます」

「なら大丈夫。紅とリカルドは俺には絶対手を出さないだろうし」

そして、クレメンスさんも同行してくれるらしいので共に破壊音の鳴る方へと向かう。
近づけば振動や音も大きくなっていき、二人の姿を確認できる距離にある行けば睨み合っていた。
遠目からだがあまり怪我はしていないようで、少なくともそれには安心した。

「あの、俺行きます」

「気を付けて下さいね」

気合を入れるためにもクレメンスさんに一言宣言した。
そうじゃないと殺気を放つ二人に近づくのに躊躇してしまいそうだったから。

崩れた瓦礫で転ばぬ様にゆっくりと歩いて行く。
どこまでバレないで近づけるかな?、と若干呑気に考えていたのだが、歩いたことによって小さな瓦礫の山が崩れる音が響く。

二人の視線が、ゆっくりとこちらへと向いた。

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