愛するよりも愛されたい。
自分はそんな人間だ。
元来面倒臭がり屋で自分から動くのはあまりない。
好きに出来ないのが心底嫌いなので、自分の為に動くことならあるけれど。
そんな俺だが、感情が死んでるわけではないので褒められたりすると嬉しいし、友達が出来て煩わしいと思うことはない。
ただ、友達になるには必ず相手からきてもらっていた気がする。
そう、ここで元来の性格が出てくる為だ。
しかし、なんやかんやで一人ぼっちやいじめなんて体験はない。
今思えば相当運が良かったと思う。
俺は付き合いに置いて、まず相手が俺に好意を持ってくれているという必要条件が無いとダメなんだ。
その条件がクリアされれば俺からも関わっていく。
紅とリカルド。
どちらのほうが俺を強く愛してくれるのか。
相手の好意を比べるのはあまり褒められたことではないけど、人間誰しも強く愛してくれた方が嬉しいだろう。
そりゃあ中には本当に淡白な人間も居て、愛が重いとか言うのかもしれないけど。
俺はどちらに愛されたいのか。
どちらともあくまでも候補であり、王でははいので俺の想いのままに。
王を選んだのならば、その絶対の力で元老院からも守ってくれる。
そしたらリカルドを選んでもまったく問題がない。
ないからこそ、迷ってるわけだが。
このままリカルドを知らなければ、元老院が紅を王だと言ったから、なんて言い訳が出来たのに。
友達とは違う愛情を向ける相手。
恋人とはその愛情を一身に向けるけど、友達は複数に分散していく。
ただ一人にそれだけの愛情を向け、裏切られるのが怖い。
これが翠が言っていた気持ちなのかと、ようやく正しく理解する。
愛して欲しいのだ。
俺だけのものが欲しいのだ。
だから俺を沢山愛してくれる人がいい。
なんて、子供みたいだなぁ俺。
ゴロンと柔らかいベッドに倒れこみ、今夜は寝ることにする。
クレメンスさんの語った真実からわかった俺のすべきことは、心の底から王と認める、愛する人を決めること。
あんなに長いこと一緒にいて紅のこと王と認めていなかったんだし、やっぱリカルドが好きなのだろうか。
だけど身体の関係まで許そうと思えたのはやはり紅だから。
結局同じことを考えてるだけ、面倒になり思考を閉ざしてしまえばすぐ訪れる睡魔。
ずっと寝ていたい、なんて現実逃避の微睡みに身体を任せる。
そのまま完全に意識が途切れる前に突如響いた轟音。
無理矢理意識が繋がれて頭が痛い。
こんな大きな音を出すなんて一体どこのどいつだ。
それにこの破壊音、こんなに近くで聞こえるなんて・・・
「透っ!!」
「クレメンスさん!なんですかこの音!?」
「屋敷に攻撃が・・・たぶん黒羽達です。隠れましょう!!」
パジャマのまま、クレメンスさんについていく。
そりゃあ俺がまた消えたのだから一大事ってやつなのかもしれないけど、こんなに早いとは思わなかった。
途中でクリウスも合流し、地下へと向かうこととなった。
そこから脱出経路もあるけれど、周りを囲まれていたら外に出ても意味がない。
とりあえず避難ということで地下にある一室へ閉じこもった。
クリウスはリカルドの援護のために別れる。
「リカルド、大丈夫・・・かな?」
「大丈夫です。この屋敷にはリジアドル家の警備の者もおりますし、本家に応援も頼まれたようですし」
「そっか・・・ごめん、俺のせいだな」
「いえ、気にせずに。花嫁に偽りの事実しか伝えぬ元老院が悪いのです。それにいきなり襲ってくる野蛮な奴等はすぐにリカルド様が撃退してくれるでしょう」