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夕食後、今度こそクレメンスさんから話が聞けることとなった。
テーブルの上の紅茶は置かれたまま、冷えていくだけ。
緊張感が漂う室内でただ小さく息を吐いた。

「では、早速話をしましょうか。王は初代を別として定められていないことは?」

「知ってます。・・・本当ですか?」

「はい。事実です」

そうか、これは、本当なのか。
紅は王ではないのか。
それを信じて傍にいたからこそ、その事実が嘘であると衝撃は強く重い。

それでも知りたい。
それだけでここまで来たのだから。
静かにクレメンスさんに続きを促した。



ーーーまず先に私について話をしましょうか。
私は、初代花嫁と王を引き合わせた予言者ソフィアの意志を継ぐものです。
あの予言の力は才あるものに代々受け継がれているのです。

透に渡した本の作者であるライムンドュスもその系譜の一人です。
我らは花嫁に知識を与える役割を持っています。
その一環として彼は書物に認めたのでしょう。

それでは、多分透の一番知りたいことから話しましょうかね。
王についてです。
吸血種の人口が著しく増えた時に初代花嫁が生まれました。
その時はどんなに強い吸血種であろうと花嫁の血に触れたら途端に肌は黒化し、やがて人間へと変わってしまいました。

そんな中で王だけが唯一その血に触れることが可能で、更に力を与えられた。
初代王は当時はまだ幼く反乱もあったのでしょうが、唯一の存在であるためひやがて王はとして認められました。

しかし、今は花嫁の血に触れても平気な者が沢山居ますね。
リカルド様や神咲紅、一定の力さえあれば良いのだと思われます。
勿論、一定の力の基準はとても高いのでそう多くは居ないでしょうが。

不思議ですよね。
花嫁を手に入れる唯一の存在。
王と花嫁はそれぞれ唯一無二でなくてはならない。
花嫁は貴方だけ、で間違いない。
なのに、なぜ王と呼ばれても良い力を持つものがこんなにも多いのか。



何故?、と俺に向かってクレメンスさんの唇が動く。
そんなの、答えは簡単じゃないか。

「・・・王の資格が複数に与えられてるからから」

「正解」



ーーー初代以外は、王の資格をもった者の中で花嫁が選ぶものなのです。
しかし、ここで次の花嫁が目覚めるまでに数百年の間がありました。
その間に世界が変わり、元老院は力をつけ過ぎた。

また王は吸血種の血が濃い者がなることが多い。
即ち純血種の身分の高い者が資格を持つことが多いため、政治的な思惑等で花嫁に選択の自由がなくなったのです。

身分の低い者が王の資格を持っていても、まず王候補自身が気づかない。
それにすぐに元老院に取り込まれたり、兎に角権力がものをいうのですよ。




「じゃあ紅は元老院にとって都合の良い存在ってこと?」

「そうなりますね。ユナルヴァルツ家とも仲が良いですし」

ユナルヴァルツ・・・と言えばカイン先輩のことか。
元老院で権力を持つ一族らしいし、なんかリアルすぎる。

「じゃあリカルドはなんでダメなの?」

「我がリジアドル家は人間との共生の反対派だ。それが気に入らないのだろう」

そう言えば、カイン先輩に他の候補の人について聞いたことがあった。
確かに共生反対派の人の名前は一切上がらなかったことを今更ながらに思い出して、権力の恐ろしさを学んだ。

「元老院は力をつけ過ぎている。だけど、花嫁の居ない期間の世界を管理しているのは元老院だし、なんともいえない状況なのです」

花嫁と王は立場的にはその上、だけど歴史の中でたまにしか現れない存在よりきちんと長く続いている元老院が世界を管理するのは仕方ないだろう。
それによって元老院が大きな権力を持つことも。

だけどやっぱり面倒だし厄介な存在なんだよなぁ。

知れば知るほど、自分が思ってるより更に複雑な世界が見えてくる。
見えてきたからと言って、そう簡単に理解することはできなかった。

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