僕はリカルドゥス。
君はユリウス。
これは愛してくれない花嫁を愛した王のお話。
お姫様を救った王様は姫に一目惚れ、あっさりと求愛を受け入れられて、めでたしめでたし大団円。
そんな簡単にいくわけないよね。
君を護りながら、一途に愛していくしかない。
あの事件から、ソフィアという老婆に王という者について聞いた。
吸血種で最も力のある者、特別な力があるわけではないものの、王と花嫁は人と吸血種の和平の礎となるだろう。
そして王とは花嫁を護らなければいけない。
彼女も戸惑っていたね。
正直僕も一緒だよ。
彼女と一緒に暮らすこととなって早数日。
とくに何も変わらないと信じていたのに、急に元老院やらなんやらを作られてもてはやされて。
ねぇ、僕がただの吸血種の一人だって知らない?
力が強いだけで、何か特別なことをしてあげられるわけでもない。
彼女に、愛されることだって出来ないんだから。
二人して環境の変化に戸惑い、ぎこちない生活を送る毎日。
僕はまだ実家で両親も居るからいいけれど、彼女はいきなりここへ連れてこられて相当なストレスを抱いているのだろう。
だけど僕は何もできないから。
ただソフィアに言われるまま、元老院にもてはやされるまま。
僕は君を護れているのだろうか?
彼女がストレスを抱いていることを知りながら、色々と連れ出されるままにすれ違いの日々だけは長々と続く。
僕のやつれた様子に、心配してくれる彼女が愛おしい。
これは運命と呼んでもいいのだろうか?
あの時の衝撃を、そのまま受け入れればいいのだろうか?
僕たちは、王と花嫁という役職に縛られすぎている。
いろんなことに慣れてきて、余裕もできてきたときにふと思った。
これがあるから彼女は自由になれない。
自由にしてあげたいって思った。
彼女は今後も僕と生きて、一生を添い遂げるのだろう。
なぜならば王と花嫁だから。
最初は様々な不満を抱いていた彼女も、諦めたのか傍に居て情が湧いたのかはわからないけれど少しずつ心を開いていってくれた。
その綻ぶ花のような美しさに、僕は更に彼女を好きになる。
ねぇ、愛しているよ。
僕の最愛の人よ。
だけど、
少しだけ、
疲れてしまった。
僕の秘密。
世界が祝福する王と花嫁の終わりの秘密。
愛してくれない花嫁と共にいた僕。
だから秘密だよ。
だって物語はいつも愛し合う者達が結ばれるだろう?
そうだよ、これが正解だ。