20

紅の隣に座らされ、熱い紅茶を出される。
それに手をつける気もせず、話が再開するのを待つ。

「桜月くん、無事だったみたいでよかったよ」

「あ、はい」

当主であるお義父さんに話しかけられて、慌てて返事をする。
ここには黒羽さんや騎士団の人たちなど勢ぞろいしてて、そんな中俺は寝間着にカーディガンをひっかけただけの姿。
少々恥ずかしいと思うけれどまぁ、諦めよう。

「さて、話を再開しよう」

「あの男についてだな。花嫁よ、話してくれ」

あの男とは、間違いなくリカルドのことであろうことはわかる。
なんて言ったらいいんだろうか。
俺が考え込むのを紅は何か危害を与えられたのかと憤っている。
それを諌めつつ、本当にどう言えばいいのか悩む。

優しかったと。
少し、少しだけ、愛おしく感じたと。

ああ、これは言ってはいけないことだ。

「あまり話をしませんでした。基本的に俺は放置されてましたし」

「ふむ・・・接触した人物は?」

「リカルド、クリウス、クレメンスさん、あとは給仕の人達です」

名前を出した人の詳細を話しながらも、料理を作ったことやお茶したことは隠しておくことにした。
これは、もう、疚しいことになってしまうだろうし。
隠したいと思った時点でダメだ。

その後も質問に答えてお開きとなった。
紅とお義父さんはまだお話があるみたいで俺は一人で部屋に帰らされた。

二時間程前まで寝ていたのであまり眠たくはない。
けれど起きていても何もすることはないし考えたくなかったから寝台に横になってみる。

想像通りに眠気は来なかった。
だけど寝ようとして何回も寝返りを打った。
そう言えばクレメンスさんに貰った本でも持ってくればよかった。
あそこには、たぶん真実が書かれてある。

明日書庫であの本を探そうと目的を決めた途端に眠気が来てくれた。
それに身を任せようとしたときに、扉の開く音がきこえてきた。
紅が戻ってきたのだろう。
だけど、今は話したくないし寝たふりだ。

「・・・透」

「っ!?」

「忘れ物だ」

紅のものではない声に、今朝までは一緒に居た人物の声に、俺は、



間も無く彼が去ったのだけはわかった。

[ 91/120 ]

[前へ 目次 次へ]
しおり

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -