2014 Halloween 【教師×生徒】 登校すると学校中から漂う甘い匂い。 女子がツノのカチューシャをしたり、カボチャの形をしたバケットを手に持ち徘徊している。 ああ、そうだ今日はハロウィンだ。 「はよー、トリック・・・」 「残念だったな、お菓子ない」 「なら悪戯だー!」 教室に入った途端、友人からあの合言葉を言われる。 素直に持ってないといえば元々寝癖を直していない髪の毛を更にぐちゃぐちゃにされた。 やめろ、これ以上汚くなったら人前に出れなくなるだろ。 なんて、ふざけていたら先生が来て終わった。 この学校は校則が緩く、あってないようなものだ。 その上制服はスカートとスラックス、ブレザー以外自由。 となれば女子がコスプレしてきても教師は怒らないし男子は喜ぶ。 とゆうわけで今、クラスには様々なコスプレをしている女子がいっぱいだ。 クラスで一番可愛いとされている子は、付け八重歯とカラコンを使って吸血鬼となった様はやはり可愛い。 写真欲しいなぁ。 昼休みに購買でお菓子かってこよう。 そしたら俺にもあの合言葉使ってくれるかな。 なんて、下心満載なのは男子高校生なら当たり前。 黒板の文字を板書しながら、あの子は笑ってくれるかな、なんてこと。考えていた。 昼休み。 友人と購買に行き、大袋に小分けされて入っているチョコを買ってくる。 準備は万端いざ出陣。 ちなみに、友人も同じ魂胆なのか袋詰めされたクッキーを買っていた。 購買から教室へ戻り、自分の席に着くまでの道すがら、あの子は友人たちと例の合言葉を使いお菓子を交換していた。 これはチャンスだと思いたまたま気づきましたよ、という体を装い近づいた。 わざとらしく戯けながらトリックオアトリートと言うと、少し驚いて、仕方ないなーって言いながらグミをくれた。 そして俺がチョコを持ってることに気づき、彼女も合言葉を使ってきた。 うん、可愛い。 周りに居た子も合言葉でお菓子をねだって来た。 あの子程じゃないけどうちのクラスには可愛い子いっぱいだ。 眼福だ、ありがとう! なんてことを席に戻ってから友人と話してた。 まぁ、顔がにやけてしまったのは仕方ないだろう。 幸せな気分のままに午後の授業が始まる鐘がなった。 気分はいいし、今から始まる授業は数学Aで、今のところ得意だし先生も好きなので最高だ。 鐘が鳴ってから少し遅れてやってきた先生。 はい号令ー、と柔らかく少し鼻が詰まったような声がした。 この先生は見た目は優男で一重の眠そうな目をしてる。 性格も優しく、なんだか可愛いとゆうのが印象で、でもそれ以上に目を引くのは身長だ。 今は平均身長が高くなっているとはいえ、この先生は192cmもあるのだ。 そして足が長くスタイルもいい。 ああ、そう言えばこの前女子に先生は草食系?と聞かれたら肉食と答えていた。 見た目からしたら草食系っぽいけど、どうやらロールキャベツ男子なようだ。 そんな風に、授業に入る前にお腹いっぱいとか少し雑談をしていたので先生のことをボケーっと眺めてしまった。 そうして、いざ授業に入るか、となった時に派手な感じの女子が先生にあの合言葉を叫んだ。 すると先生は悪戯っ子みたいに笑って、飴玉を投げた。 まさか貰えるとは思っていなかったらしくて、目をパチパチさせていた。 「まだあるよ」 そうしていたら先生はズボンのポケットに手を突っ込み、そう言った。 そう言えば飴玉はどこから出したのだろうか。 その答えはすぐにわかり、ズボンのポケットから飴を取り出して欲しいと手を挙げた生徒に投げつけていた。 どうやら、コントロールは悪いらしい。 でも、なんか、かっこいい。 教壇の上で仁王立ちする192cm。 ポケットに手を突っ込んで笑ってる姿は、カッコイイ意外に当てはまる言葉がない。 クラスのカッコつけたい系の男子が俺もお菓子はポケットに入れておこうとつぶやいていた。 どうやら全員分はないらしく、ふいにあと一個と言った。 欲しい、そう思ったけど小心者だ。 目線でわかるかな、と思ったらこっちを見てくれた。 あ、貰えるかも。 そんな直感で、見つめていたらぼーっとし過ぎていて投げつけられた飴玉が見事に顔面に直撃だ。 痛い、でも嬉しい、でもやっぱり痛い。 俺の間抜けな姿に教室がわく。 なんだよ、痛いんだぞこっちは。 先生が笑いながらゴメンと言った。 ああ、その様もカッコイイ。 そうして、ひとしきり遊んだ後は授業に入った。 何事もなかったようで、ちょっと悲しい。 俺は、先生のことがなんだか気になるようで、ずっと目で追ってしまう。 顔面に当たったせいで脳みそがおかしくなったか。 授業は終わり、先生が去ってく。 そして次の、今日は最後の授業が始まり、終わった。 ホームルームも終わった。 仲良い奴は部活でぼっちで帰ることとなった。 さみしいなぁと思いながら教室から出て階段を降りてると、数学Aの先生に会った。 挨拶をして通り過ぎようとしたのだが、止められた。 「さようなら」 「あ、これあげる。さっきは、ごめんね?」 そうしてポケットから出てきたのは棒付きキャンディ、通称ロリポップ。 なんだ、凄い可愛いやつだぞ、俺男。 「ありがとうございます」 そうは言っても素直に嬉しいので受け取ってお礼。 すると、先生は俺の頭を撫でて階段をのぼってった。 俺はとぼとぼと降りてく。 なんだらこれ。 なんか、なんか、言葉にできない感情。 鞄に入っていた、顔面に当たったあの飴玉を取り出してロリポップはしまう。 少し眺めてから、小袋を開けて飴玉を口に放り込んだ。 かぼちゃ味の飴は、あんまり美味しくないな。 かぼちゃ味のキャンディ (よくわからないこの感情の味かもしれない) しおり |