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巨木の陰で昼寝をする俺を呼ぶ慌ただしく声が聞こえる。
一体何なんだと、仕方なく起きて姿を現せばまさかの出来事が起きていた。

白髪が生まれたのだ。

この世界において白髪と言うのはとても重要な意味を持つ。
その監視者を担う一族、の一人が俺だった。
まだ16であるが、代々短命な一族の為15で代替わりとなっている。

前回白髪が生まれたのは7代前のことであり、俺も役目を全うすることもなく終えるのだろうなと思っていた。
しかし、生まれてしまったからには役目を遂げねばならない。

「わかりました。準備ができ次第行きます」

先代、すなわち親父の言葉に頷き準備に取り掛かる。
哀れな白髪の生を見届けに行くために。


白髪が生まれた地に行くまでに、考えてみる。
この役目の終わりを。

それは白が黒に染まり、その生を終えるまでだ。
期間にして20年間。
それが記録に残されているこれまでの白髪の一生だった。

白髪はこの世の全てに疎まれる。
しかし20年間の生を全うしなければ世界に災厄が降りかかる。
だからこそ監視者という役目は、生存を常に確認することが重要なのであった。

これから20年間ずっとずっと白髪を見つめ続ける人生。
短命だと言われているのに、そのうちの20年も使わなければいけないのかと思うと悲しいものであるが。

約半日も列車を乗り継ぎ寂れた田舎町に辿り着く。
道中居住場所を確保したとの連絡があったのでとりあえずそこに向かう。

そこは、白髪の家の向かい側であった。
このような田舎町はご近所付き合いも盛んだろうから上手く入り込んでいこうと決め、向かう。

これからの人生を捧げる相手。
白髪に生まれただけで全てに疎まれる悪なのだ。
可哀想な、ただの人間だ。

荷物は後日届くらしいので、兎に角暫くの衣食をどうにかする為出かける。
ついでに情報収集をすることも忘れずに。

「大根、レタス、ジャガイモ…それとリンゴも」

「まいどあり!兄さんここらじゃみかけない顔ねぇ」

「今日引っ越してきたんです」

「あらまぁ、こんな辺鄙なとこに」

少し警戒されている。
確かにこのような町は入ってい来るより出ていく人の方が多いだろう。

「僕は装飾具とか作る…まぁ職人みたいなやつです。こういう静かな場所の方が集中出来るんですよ」

「へぇ…お若いのに、もう一人立ちされたの?」

「父が職人でその弟子として修行してたんですが、先日亡くなりまして。母も居ないので、自由に出来るんですよ」

「それはご愁傷さま。兎も角、これからよろしく頼むよ」

「こちらこそ」

父さん、勝手に殺してごめん。
最後に握手をして肉屋を探し求める。
白髪の監視が仕事なので小さい頃は何もせずに飯食ってるだけになりそうだ。

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