ソファーの両端に座る俺達の間の距離は、そのまんま心の距離。
今は大丈夫だってわかっている、けれど頭だけの理解で身体は置いてけぼりってわけだ。
二人きりの室内だからって、いちゃいちゃすることはない。
俺は雑誌を読んで、彼は最近発売されたモンスターを狩るゲームに夢中だ。
この時間は案外嫌いではなくて。
未だに慣れないのは、距離とか彼の鋭い瞳だけ。
あの瞳が俺のそれとぶつかると、背筋がぞわっとして落ち着かないのだ。
「・・・おい、お茶注ぐか?」
「あ、うん。お願い、します」
無事クエストを終え満足そうな彼の言葉に頷く。
敬語は止めろ、と言われてもまだ完全に止めることはできない。
彼はちらりと俺の方を向いたけれどそのままキッチンへと向かっていった。
「なぁ、後で一緒にやろうぜ」
「うん。新しい武器作りたいんだけど素材が足りなくて」
「じゃあそれ集めに行くか」
ある竜の尻尾が足りなくて困っていたのだ。
装備が弱すぎて次のモンスターへ行くにも不安しかなくて。
こうやって優しい所を見る度に、少しずつ距離を縮めていきたいと自ら思うようになってきた。
それはきっと、恋に落ちるというのではなく絆されたってやつで。
心底恐ろしくて堪らない、それでもこうして傍にいるには怖いもの見たさって感じと彼が俺を放さないからだった。