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虐待と呼ぶには、存在を認めてもらえず

だからと言って関わりがなかったとも言えない程に暴力は受けた。

俺は死んだ母親に似ていた。

父は日に日におかしくなり、俺に暴力をふるった。
よくある小説みたいに母親と間違えて押し倒されるだなんてことはなかったけれど。

父親は1週間に1度家に戻ってきて俺を殴る。
綺麗に、見える所には暴力を振るわないところが凄いと思う。

痛い、イタイ、イタイ、痛い。
殴られている間はそれしか思い浮かばなくて、馬鹿みたいに叫んでイタイと泣いた。


それだけで、十分に俺を傷つけるというのに奴は殴り倒してぐったりした俺を見て懺悔でもするような目で見て一言

「生活費だ」

と言って財布からいらない程の金を出して、そのまま着替えを取りに部屋へ行き、逃げるように外へ出ていく。

俺は、それをただ見つめている。


そんなある日
俺は包帯と薬がない事に気づき近くのコンビニへと足を運んだ。
顔や、腕には痣なんてないから俺の現状何て誰も知ることなく通り過ぎて行く。

側から見ればそれが当然だし、面倒なことに関わりたくないのは俺も一緒だから何も思わない。

それでも、それでも助けを求めたかった。


買い物が終わり、外へ出ると体が妙に熱いことに気が付く。
あぁ、熱でも出したのかな…

一応、学費は出してもらっているから学校へは行く。
ちゃんと友達もいるから俺の逃げ場だし。

そんな学校に行けないとはなんとも辛い。
心の落ち着ける唯一の場所なのに…

フラフラして電柱に頭をぶつける。

そんなとき、彼が声をかけてきた。
それが彼との初めての出会いだった。
意識が朦朧として、そのまま闇に落ちた。


目が覚めると、先程の彼の顔。
どうやら拾ってくれたらしい。

そして自分の状態。
体には包帯が巻かれてあった。
自分でした覚えはない。

「・・・・・」

無言で見ると、彼は言った。

「俺が守ってあげる」

あまりにも優しい目で俺を見るから、涙が溢れた。


友人には気付かれたくないと思う反面、如何して気付いてくれないのと思う心もあった。
そして、諦めの反面に助けて欲しいと思う心があった。
誰も気付いてくれない、心の反面に彼は気付いてくれた。


そんな彼に惹かれていって、傷が完全に治った時に駄目元で告白すると、実は俺も好きだって言ってくれた。
最近の俺は涙腺が緩いらしい、泣いてしまった。

これが終わったら家に戻ろうと思っていたけれど彼は引き留めて、此処に居ていいと言ってくれた。
それに、また泣いてしまったのは仕方ないとしてほしい。


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