3

白髪は森に居た。
野兎や鳥が自由に動き回っている。
苔のついた地面に腰を下ろし木に寄りかかって寝ている。

彼が野生動物に襲われて死なないように、今日も隠れてついてきている。
森に行くのを止めてほしかったけれど彼の命が三年に迫った頃から、彼の願いは何でも叶えてやりたいと思っていたから、気を付けろとだけ言った。

今日で、白髪は19歳になる。
彼が死ぬまであと一年だ。
もう髪は殆ど黒に染まっているから、白髪と言うのも変かもしれない。

お役目中とはいえ跡継ぎが必要なので決められた女を抱いた。
その女は無事孕んだそうだが、俺の精神は無事ではなかった。

俺は白髪を想像して女を抱いた。
つまりはそういうことで。

プレゼントで渡した腕輪を白髪は喜んでくれた。
お揃いにしたいなと言われたから自分の分も作るつもりだ。

彼の言動に含まれる意味を知っている。
何故なら俺と同じだから。
きっと彼も感じているから、その先を求めている。

同じ想いなのだから関係を結べば良い。
けれどそれをしないのは俺は生きていたいからだ。
温もりを知って、彼が死んだあと生きていられないと思うから。

とまぁ、自分のことだけを考えていたら彼に襲われてしまった。
情熱的な言葉を貰いその体を捧げようとしてきたら我慢など出来なかった。

馬鹿だなぁと思う。
初めて彼を抱いた日、微睡む彼に全てを告げた。
君はあと半年で死んでしまうんだと。

冗談だと笑われるかと思ったけれど、何となく感じていたと言われた。
ただただ涙が出てきて、彼に縋り付いて眠った。

次の日からずっと一緒に居た。
彼の両親は心配げに俺らを見ていたけれど、彼が幸せならと口を噤んでいた。
本当に良い両親だと思ったし、彼は愛されていると感じた。

この世の全てに疎まれるなんて言った、今はもう死体となった王族にざまぁみろと言ってやりたい気分だった。

毎日キスをして、抱きしめあって、その気になれば身体を繋げる。
あんな小さなころから見てきた、16も年の離れた子供。
本気で愛して、今こうなっているなんて当初の自分は想像もつかないんだろう。


黒は黒でも漆黒と言われる深い黒に、すべて染まった。
休日ということもあり昼間は家族でお祝いをしたらしい。

夕暮れ時、彼は俺の家に来た。
途端に泣き出した。
俺も泣いた。

身体を繋げた。
彼に、殺してと言われた。

「俺が殺さなくてもお前はもう死ぬんだよ」

「…でも、貴方に殺されたい」

ベッドに寝そべったままの彼の首を絞めた。
本気だった。

でも俺は彼が自然に死ぬのを見届ける、役割がある。
手を放して咳き込む彼を眺める。

もう一度、首に手を添えた。
絞めないけれど、彼が息絶えるまでこうしているつもりだ。

沢山愛しているといってくれた。
俺もだと言い、思い出話をした。

そうして彼は死んだ。
止まった心臓がその事実を告げている。
左胸に耳を寄せて鳴らぬ音を聞き続けた。

彼の心臓になりたかった。

Black only
君への想いを表す色

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