次の日、いつも通りの時間に起床。
朝は紅茶とパンを食べて学校へ向かう。
習慣というのは素晴らしいもので気付けば放課後。
生徒会室へと向かう道すがら、仕事モードに入った思考で邪念を消して。
「会長。今日は早いね」
「HRが短かったからな」
「そっか。急ぎの書類は?」
「ない」
いつも通り過ぎて何も言えない。
ここは仕事場だからとしても、妙に冴え渡った冷静な思考は違和感を感じる。
けれど一旦書類に向き合えば全てを忘れて。
昨年の資料を見比べて、必要なデータを打ち込んで修正して、気付けばいつも休憩してる時間になっていた。
このままだと能率が下がりそう。
目も疲れてきたし、紅茶と甘いものが欲しい。
その心のままに応接室へと向かった。
お気に入りの茶葉に熱々のお湯を注いで蒸らして。
この時間もなんとなく好きなんだよなぁ。
「俺にも淹れて」
「っ、会長」
ぼんやりしてから肩を叩かれて、きちんと返事してないのにソファーの方へと向かう会長を見送る。
そりゃ、淹れてやるけどさ。
好きだ。
本来ならば好きになってくれるように努力して、告白とかもしたかった。
転校生が来る前は、会長が好きなクッキーをこの休憩室に常備したりセックスのために後ろ綺麗にしたり。
そんなちょっとしたことから恥ずかしいことまで精一杯やっていたつもりだ。
セフレから少しずつでも近づければいいなって。
でももう答えがわかっているなら。
そんな努力も会長に好きな人ができたなら仕方ない。
転校生も見た感じ、両思いってやつだろうし。
ならば二人がきっちりとくっつく前に離れたかった。
セフレなんて関係より、友達であり生徒会の仲間として祝福してあげたかった。
どちらにせよちゃんと祝福できるかはわかんないけど。
「どうぞ。チョコあるけどいる?」
「ん、いる。紅茶ありがとな」
いっつも疲れたからとか言って生徒会室に来るの遅いくせに。
紅茶淹れてあげてもお礼なんて言わないくせに。
もっと好きになるよ?
どうすんだし。
いつもの好きな味に身体はリラックス状態に。
力を抜いて甘いもの摘んでそれだけで幸せ。
会長とも喋って、ここは天国だろうか。
話の流れで好きな茶葉について語っていると、唐突に会長に名前を呼ばれた。
その衝撃で瞬きが多くなって、その綺麗な顔を呆然と見つめる。
「理って呼んでいい?」
「っ、好きに呼んでいいよ」
「じゃあ理も、恭一って呼んで」
「わかっ、た」
唐突すぎて心臓に悪い!!
なんか一周回ってキレそうなんだけど、情緒不安定かもしれない。
全部会長のせいなのに。
「で、俺のこと好きになれ」
「・・・は?どうしたの」
いや本当に唐突すぎるんだけどこの人、俺今幻覚見てんのかな?
そう思ってしまうぐらいには会長の思考回路が読めない。
「だってセフレになったってことは少なくとも嫌ってはないだろ?それにセックス中凄いキス迫ってきてたし」
「あっ、いや、それは・・・!」
「好意はあるだろ?な?」
「いや、その、」
「まずは好きになろうと意識改善することから始めてくれ」
「会長!」
どうしたの?
そう言って止めれば、会長もハッとしたかのような表情に。
息を吐いて紅茶を飲んだ会長。
俺はというと彼の言動に注目するしかできない。
「おまえが、俺のこと好きなのかと思って」
「っ、」
「光にセフレは駄目だって言われて。今迄セックスだけだったけどさ、俺もそれじゃ駄目だなって思ったんだよ」
「・・・それで?」
「セフレじゃなくて恋人になって欲しい。中途半端な関係は続けるもんじゃねぇだろ」
「他にもセフレいるんでしょ?」
「お前とヤッてから全部切ったけど」
「なん、で?」
「そん時はなんとなくだった。でも好きな奴いるんだから当然だ」
「誰?」
「だからお前だって」
「転校生は?」
「ちげーよ。光にキスした時にさ、今までのノリでやったけど違和感すごくて。そん時にお前とのキス思い出して」
それで、好きだってわかったんだ。
好き。
会長が俺のことを。
俺も会長が好き。
好き、大好き、愛してる。
声が出ない。
そう言えば関係を始める時も緊張からか声が出なかったんだよなぁ。
でも今はそんなことじゃダメなんだよね。
言わなきゃいけないことがあるから。