俺が終わらせなければいけないと、そう思った。
俺という人間は、どんな時でも公私はわけられるらしい。
あれから別の部屋で心臓を落ち着けて生徒会室へと戻っていった。
そこには会長も当然居て、仕事場に戻ったからか何の戸惑いもなく話しかけられた。
しかし夢から覚めたように。
仕事が終わって役員で部屋を出ていくと同時に体が強張る。
前を歩く副会長と書記が楽しそうに会話をしているのに、こちらは無言だ。
普段ならもう少しはまともに喋れるのに。
「部屋、きて」
「・・・・・・・」
声は出なかった。
でも当然のように首を縦に振っていた。
それから会長の部屋に行くまで考えた。
終わらせ方を探して。
心底馬鹿だと思う。
恋に落ちるというよりも、俺という存在が恋心に殺される。
その瞬間を今では心待ちしているから。
恋心が死ぬように、ゆっくりと共に心中するのだ。
エレベーターが真ん中で、左右に分かれた廊下。
副会長と書記が右を行き、二人残される。
じわりと首が絞められていくような気持ちで会長の部屋に入った。
定位置となったソファーの右側。
会長が紅茶を持ってくるのを待つのさえ緊張でどうにかなりそうだった。
終わらせると決めた。
いつもみたいに、紅茶を一杯飲むと彼が触れてくるのだ。
最中は性急に求めてくるくせに、スロースターターってタイプなのかな。
一口分だけ残して、左側に座った会長の方を向く。
ああ、好きだ。
「そろそろこういうの止めよ?」
「なんだよ急に。ってあれか、光が言ってたからか」
「そう。セフレ自体は悪くはないと思うけど、でも」
本当に身体だけならばいいと思う。
けれど俺は、違うよ。
身体だけでも繋がれるのは本当に幸せなことだ。
想うだけなんて疲れるけれど、彼を奥で感じることのできる見返りが貰えるから。
いつも後半意識が朦朧としてきたときでもがむしゃらに抱きつく。
すると最中だからか彼も抱きしめ返してくれるんだ。
その幸せはとてつもないと思う。
でもそれが自分のものではないと突き付けられる未来が怖いのだ。
そう考えれば、自分で終わらせた方がよっぽどいい。
「まぁ、そうだな。俺も終わらせようって思ったし」
「・・・そっか」
彼は、会長は俺をすきじゃないから終わりなんだ。
知ってたけど。
「じゃあこれで終わり」
返事、しないで。
「おう。それでさ、」
「俺も今度はちゃんと恋人作るから」
「・・・あ?」
「他のセフレの子達とも止めなよ。本当、疲れるし」
君を想うのに疲れたよ。
そう心で付け足してすぐ隣の俺の部屋へ駆け込んだ。
慌てて出てきたからローファー踏んでしまった。
馬鹿だなあ、本当、馬鹿。
悲しい。
けれどきっと、今失った方が傷は浅いってわかってるから。
電気もつけずに玄関で立ち尽くす。
ただ喪失感に呆然とするだけ。
終わったんだと、ただそれだけを理解するために脳を使う。
痛むほどに思考を巡らせても涙ひとつでてこなかった。