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約一ヶ月前に転校生が来た。
彼はこの学園の生徒達とは違った人間だった。

自分にないものを持っている人というのは、総じて嫉妬もしくは尊敬の対象となる。
彼は沢山の友人を作る代わりに沢山の敵をも作った。

俺の彼に対する感想は面倒臭くて我儘で独善的。
だから、そんな彼の一言に心を抉られるとは思わなかったんだ。



あれから会長とセックスをするようになった。
恋人になったわけではないから、多分セフレという関係なのだと思う。
ヤろうぜと言われて、予定さえ空いていればそのすべてに頷いた。

しかしふいに会長と転校生の時が交わって。
なんてことはないお昼の時間、学食で転校生が会長に声をかけたのが始まりだった。

俺の時みたいに、キスをした。
そこから、一瞬交わっただけの点が線に変わっていくだろうことが予測出来て。

転校生は会長を殴った。
これがきっと正常な反応、当然の対応。
彼に恋する俺、その他学園の生徒が異常なだけ。

会長は茫然として、驚いた顔をしていた。
彼もまた異常が通常の世界で生きているから。
だからこそ彼にとっての異常事態に興味を持ったんだろう。

ははっ、なんて一切面白く思ってないような乾いた笑い声を上げて、俺を見た。
それが何の意味を持っているのかなんてわからない。

けれど予想は出来るよ。
俺は用済みなのだと。

会長は性には奔放な人間だけれど、人としておかしいわけではない。
中学時代には付き合っていた人が居たらしく、その間はセフレも全員切り捨てたらしい。

だから、俺も切り捨てられる。
当然すぎるけれど、正しいからを言い訳にしても傷ついてしまうんだ。

その時が来るまで、近い未来なのだから彼から通達されるまでは。
縋り付く愚かしさに自分を嗤った。

それから無情にも予測通りになった二人。
あまりにも想像通りで自分凄いなって、思わず自画自賛した程だ。

そんな彼らが目の前で仲睦まじくしている。
現在場所は生徒会室の横、応接室という名称の休憩所。
一応来賓との話に使ったりするから汚しはしないけれど、個々が好きなお菓子や絵やインテリアを持ってきている。

という無駄な情報を思い浮かべないと頭がおかしくなりそうだ。
今が休憩中ではなく仕事中であったならこんな風にはならないのに。

仕事に戻ればいいが休憩にきたのは少し前で、こんなすぐに戻ったら不自然極まりない。
それに今迄仕事していたのだ、少しの休憩ですぐに回復する超人ではないので能率が下がって余計な時間を使ってしまう。

こうやって考えまくってしまうのは多分性格だ。
一生治らないんだ。
この恋心も。

溜息を吐いて紅茶を一口。
喉を潤すその熱さに、頭がクラクラする。
これを飲み終わったら仕事に戻らずとも少なくともここを出ようと、決めたその時。

「セフレなんてダメだろ!!」

「でも利害は一致してんだから」

「絶対ダメだ!恋人とか好きなやつとするもんだろ!?だから恭一は俺と・・・!!」

あ、だめだ、これ、は。

死にたくなった。
好きな人とするもの。
俺は好きな人としてるけれど。
恋人じゃないし、そもそも会長は違うから。

一息に紅茶を飲み干して席を立つ。
慌てたせいで気管支に入ったのか噎せてしまう。
それを一生懸命に抑え込んでこの空間から一秒でも早く出ていくために。

自分自身わかっていたことでも、他人に言われると心にこんなにも突き刺さるのか。
どんな時でもどうしても呼べなかった会長の下の名前。

一人部屋に居ても呼べなかったよ。
セックスしてる最中で会長が俺の名前を呼んでくれても、言えなかった。

こんなとこで聞きたくなかった。

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