それから大学に入り一人暮らしをした彼の家に、今では週4日は遊びに行っているという現状。
いや、本当に彼のことを好きだと思う気持ちはあるからそれはいい。
だけど、その気持ちは実際のところ本当に小さくて。
あの日頷いたのは彼が再び暴力的になってしまうのではないかという懸念からだった。
今は身体を求めてくることがないことで救われている。
そのことで恐怖が薄れていくたびに少しずつは気持ちも増していくけれど、きっと彼の気持ちの1000分の1ぐらいしかないんだろうなって。
そもそも彼は本当に俺の事好きなんだろうか?
俺の常識では好きな相手にあんな暴力振るうことはないと思う。
そりゃ世の中にはサディストってのがいるから一概には言えないのだろうけど。
でもそうゆうのってプレイの一環として、あんなに恐ろしいものじゃない、と思う。
まぁそこは想像でしかないのでこれ以上言えない。
一緒にモンスターを狩っているという現状も忘れ、そっとゲームに夢中な横顔を盗み見る。
楽しそうなその顔は、嘘ではないと信じておこう。
「おい、そっち行ったぞ」
「あ、閃光玉投げるよ」
危ない、死ぬとこだった。
無事眩んでくれたのでその隙になんとか倒し、ゲームが終わる。
「次なんか狩るか?」
「報酬見てからでいい?」
「おう」
もしも、もしも俺が別れると言ったのなら。
彼はどんな反応をするのだろうか。
「おい、報酬でてんぞ」
「・・・っあ、」
目の前に近づいてきた彼の顔が入り込んできて咄嗟に逃げてしまった。
いつも、どうしても傍にくると恐怖を隠すことが出来なくなる。
その後彼が不機嫌になっていないか窺ってしまうのだ。
顔を逸らす彼の横顔を、いつまでも見つめ続けた。