恋人が死んだ。
昨日の夜に。
それは事実としてこの現実にあるのだけれども。
やはり信じられないのは仕方ないだろう?
好きだったんだ。
大好きで、大好きだったんだ。
愛していたんだよ。
いつか別れてしまう、不安定な関係を恋人と呼び、男女ならば結婚という形でその不安定を取り除いた。
しかし、俺らは男同士だったから結婚なんて勿論出来ないし母さん達は驚きながらも受け入れてくれただろうが、孫を見せられない。
どんなに愛していても結ばれない恋なんてあるけれどさ、俺らはその結ばれない恋を叶えてしまった。
それが、神様の怒りを買ったのかな。
人間は神様に作られた。
よくあるお話。
人間は生き残るために生殖活動をし、子孫を残す。
それができない俺たちだから、彼を殺したのだろうか。
彼は自動車に引かれたらしい。
笑うと人懐っこい目だとか、優しいキスをくれた唇だとか、いつも頭を撫でてくれた手だとか。
全部、全部散り散りになったらしい。
医者も、自動車事故でこんなに無残な姿になるなんて初めてだと言っていた。
やはり俺らは神様に嫌われていたのだろうか。
恋人の、見るも無残な姿。
彼の、綺麗な肉体がただの挽肉に。
彼の両親には、俺らは仲のいい友人で通していた。
俺と同じで両親にバレたくないという考えを持つ彼と、考えた。
だから、両親は俺に一番に電話をくれた。
別れる前、俺と一緒にいたから。
電話からは、どうしてもっと早く家に帰ろうとしなかったの、だとか理不尽な文句。
それでも、もしこれが神様からの罰ならば。
俺がかれを殺した?
どちらにせよ、自分が死ぬ前に息子が死ぬだなんて親の最大の不幸だろう。
もしもの話をするけれど、彼との子供がいて、その子が俺より先に死んでしまったら発狂してしまいそうだ。
それを思うと彼の両親には同情するし、心から彼の冥福を祈ろうと思う。
なぁ、神様。
俺が悪かったんだろう?
彼を愛したのが悪かったんだろう?
全部、全部知っているさ。
だから彼の両親の文句も、なんでも受け入れてやるさ。
でも、ひとつだけ願いを叶えてよ。
彼にもう一度だけ会わせてよ。
そしたら俺は彼を笑顔で見送るし、その笑顔でこれからも生きていける。
それすらも罪になるのかな?
いや、その前にこの関係が罪ならば俺もそろそろ死ぬのかな。
彼がいない世界なんてつまらないんだから、むしろ俺にとって喜ばしいことだ。
君のいない世界なんて耐えられない。
よくある小説の台詞さ。
みんな、またかよみたいな感じでこの台詞を読むのだろうけれど。
この一言に、‘君’を愛した己の気持ちが全部組み込まれているじゃないか。
だって、愛したんだよ。
世界の全てよりも彼を愛していたんだ。
俺の世界イコール彼。
そんな等式が成り立つくらい愛していだんだよ?
世界が壊れたのならば、己の世界が壊れたのならば。
その壊れた世界に、なんの意味も見いだせないじゃないか。
もしも神様がいるのなら
俺も殺して