休日

疲れた体をベッドに横たえる。
金曜日までは仕事ばかりで帰っても夕飯を食べずにそのまま寝るだなんてことも多々あった。

というわけで寝る。
もうこれは最優先事項だ。
そして久しぶりに夜は同僚が勧めてた店に行って美味いもん食って酒飲む。
これが俺のハッピーな土曜日の行動予定だった。





金曜日の夜からまるで死んだように眠っていた俺を起こしたのは携帯の着信音。
表示された文字を見て寝ぼけていた脳みそがフルパワーで活動したのつい先程の話だ。

俺の勤めている会社は大雑把に言うと機械を取り扱っている会社だ。
土日も機械を稼働させなければいけないので常に二人は会社にいなければいけない。

「・・・・こういう時なんで断れないんだろ」

日本人の性質というかなんというか、押しに弱いところは俺の直したい性格だ。

上記の説明でわかったように今、俺はその土曜出勤をしなければいけない。
本当は俺じゃないんだけど二人のうちの一人が体調不良で吐いたらしくて家に帰ってしまったそうだ。
それを上司に伝えたら誰か呼べと言われたらしくて俺に電話がかかってきたらしい。

憂鬱な気分で会社へと向かう。
せめて気分転換しようと外の空気を吸うためにいつもの駅より一つ後に乗ることにして歩く。
この地域は比較的緑が多いところなので気分は少しは良くなってきた。
土日なので車は多いけれどもそこまでは多くないので排気ガスの独特の嫌な匂いもあまりなくて嬉しい。


しかし、そんな気分も会社へとついてしまえば自然と消えていくもので。
目の前の建物に、思わず踵を返したくなるものだがグッと気持ちをこらえて足をすすめる。

中小企業なので建物も小さく、人数も少ない。
だからか知らないけれど和気藹々というか同僚やら後輩やら上司やらみんな仲良しだ。
仕事は辛いけれどもメンバーにはなんの不満もない。

不満はないけれども。
先ほど電話を寄越してくれやがった相手にはちょっと問題がある。
それはまぁ相手が、好きな奴だからだ。

同僚で、プログラマーをやっている俺とは部署が違うのだが同じ大学の奴だったらしい。
大学の学部は違ったのでそれまで接点は何もなかったのだが馬が合った為すぐに親しくなった。
そして、俺は相手への感情が少しずれてしまった。

ため息を吐きながらも足を進めると奴は椅子にもたれかかって珈琲を飲んでいた。
一回目を閉じて深呼吸をすると声をかける。
それに振り向いてこちらを見ると子供っぽい、人懐っこい笑みを浮かべた。

「槙島(まきしま)!急に呼び出して悪かったな」

「いや、別にいいよ。てかなんか大変だったな」

「いきなりゲロったからビビッたよ」

まゆを寄せて苦笑する姿も愛おしいというかなんというかでもう、俺の目はどうなってるんだか。

「でさ、早速で悪いんだけどちょっとパソコンがおかしいようで」

「ちょっと見せてみろ」

近づいて浅井(あざい)が座っている前のパソコンの画面を覗き込む。

「何処が悪いんだ?」

「なんか動かないんだよ」

キーボードを適当に打ったりマウスを動かしているが動かない。
面倒臭い状況だが来たからには仕事をしなくてはいけない。

「俺パソコンそこまで詳しくないんだよ」

「はいはい、本職に任せとけ」

「すまん、宜しくな」

取りあえず椅子から退いて貰おうと呼びかけると何故か掴まれるネクタイ。
吃驚して相手の名を呼べばそのまま引き寄せられて唇に柔らかい相手のそれが重なる。

「っ、やめ…!!」

止めろと叫べば舌が入ってきて口内を好き勝手に動き回る。
好きな相手とする口づけに体が熱くなって、衝動的に己の舌を絡ませる。
そのまま口づけの主導権を握ってやろうとしたのだがそんなことをさせないとばかりに強く吸われる。

「、ぅん…あ、ざい…」

それを最後に唇が離れていくから、荒い呼吸のまま名前を呼ぶ。
浅井はニコリと笑って俺を足の間に座らせて後ろから抱きしめてくる。
今顔を見たらもう死んでしまうかもしれないからよかった。

「このまま、やれ」

首筋に顔を埋めながら言われる。
昂ぶっている体にはもう毒なのだが相手が浅井だと思うと甘受する。
少し震えている指先に力を込めて動かす。

「んっ!…や、駄目、っ」

ボタンを外されてネクタイを緩められて首を舐められる。
誰だって弱いところだと思うそこに柔らかな唇が落とされるその感覚から逃れるために体を動かすが彼の両腕に拘束され思った通りに行かない。

「どうした?」

いったん首から舌を話すと意地悪にもいつも通りの様に振る舞い聞いてくる。


いったい、何がどうなってこんなことになったのだろうか。
そんな単純な疑問も考えられないほど意識は浅井一色に染まっていて。

覆いかぶさってくる背中にそっと手を回した。


Fin


―てめぇ、こんなとこでヤりやがって…
―いいじゃねぇか、好きだよ。
―っ…!!

―ってわけでもういっかいな


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