無限ループ

目が覚める。
カーテンを閉めているので室内は暗いが、隙間から少しの光が漏れていた。
目を顰めながら、今日も後始末も服も着せてくれなかったのかとため息をつく。

「・・・眩しい」

小さく呟いてみる。
それに返してくれる声は誰もいなくて。

もそもそと起き上がると鈍痛を訴える腰。
昨日も散々に抱かれて最後は言葉にならず、明日は死ぬのではないかと朦朧とした頭で考えていたものだ。
結局今日は残念ながらも素敵に眩しい太陽の光で生き返ることができた。
よくある童話では王子様のキスで目覚めるけれど、王子様もとい俺を抱いた男はもう此処にはいない。

ベッドに座って、痛む腰をさすりながら立ち上がると白濁色のものが太腿へ伝う。
それを不快には思うけれど表情に出すにはもう慣れすぎて、溜息一つで浴室へ向かう。



シャワーを浴びてそっと後ろに手を這わせると溢れてくる白濁色の液体。
変な匂いがするし、孔の周りは乾いてしまったものがカピカピになっていて少し痛い。
よく慣らしていないのに突っ込まれたから多少の血が出てしまい、切れたところも痛む。

孔を綺麗にし終わるとあとは普通に髪の毛とか舐め回された皮膚を洗う。
唾液でベタベタになっていたので乾いたところは引き攣るような小さな痛みを訴えている。
石鹸で綺麗になったらお湯を止めて浴室から出てタオルで体を拭く。
先程適当に取り出した下着とスウェットに着替えて濡れた髪の毛にタオルを被せると静かにソファーへと向かった。
柔らかいそれに包まれて、先程まで寝ていたというのに眠気が再び襲ってくる。

そんな時にふと鳴り響くチャイムの音。
今日は土曜日だから会社の奴らは各々の家でゆったりしているであろう。
まず会社内に家を行き来するような仲の人間は居ない。
大学高校時代の奴らはもう全国に散らばっているし、この地域には居ない。
あえて大学卒業後地方に行ったから。

それはこのチャイムを鳴らす奴から逃げ出すためだったのだけれども。

中々出ないことに苛立ったのか扉を蹴ってくる。
あんまりにも煩いとお隣りさんにも迷惑がかかってしまうのでのそりと立ち上がった。

扉を開けると相も変わらず不機嫌そうな顔。
そんなに眉を顰めていると皺が取れなくなると思う。前に言ったら皺が更に深まったのでもう言わないけど。

「・・・・何のよう?」

玄関を開けて開口一番にこちらも不機嫌そうな顔で言葉を発する。
相手も別に気にした様子はない。でもなんか目が凶悪だ。

「別に。通せ」

そう言って無理やり押し入ってくるので黙って横にそれた。

後ろを歩きながら思うが、いつもコイツが来るのは夜の8時ぐらいだ。
だからこんな朝っぱらに、しかも昨日来たばっかりで来るのは珍しい。

ソファーに座られた。
元々二人用のソファーだから俺も座れる場所はあるけれどあえて座らずに壁に寄りかかる。

「で、何のよう?休日だからもう一眠りでもしたいんだけど」

本当はまだ腰が痛いから横になりたいという意味なんだけれど、眠りたいというところに暗に含ませた。
気づいてくれるかはわからないけれど何か言わないと気がすまない。

「眠らせてやる」

嫌味のつもりだったのだが不機嫌な顔はそのままで立ち上がり、俺のもとへ来る。
これはもう完全に抱かれるエンドだろう。そんなフラグは追ってやる。
掴まれた腕を振るが全くの効果が無いこの悲しみ。

ベッドに倒れこむ。
上を向くと玄関で感じた凶悪さが更に上がっていた。

「・・・・・・・馬鹿」

小さく悪態をつくと奴は珍しく笑ってお前がなと言った。


その後はいつもどおり、一回イカされて解かされた孔に奴のを突っ込まれた。
奴が満足するまで解放されないのは分かっているが、激しい動きに早々に意識が朦朧としてくる。
昨日も散々抱かれた体はもう悲鳴を上げているがそれでも意識が飛びそうになっては嫌なぐらい感じる快感に叩き起される。

そんなのを何回か――今日は3回も中で出された――繰り返してようやく解放される。
合わせて本格的に薄くなる意識。

そんな時にいつも囁かれる言葉。

「・・・・愛してるよ」

あぁ、だからいつもこんな時に言うなって。

今日も俺はそれに返事が出来なかった。
だって、本当は返事したいんだけどもう口が動かないし喘ぎすぎて声が出ない。
消えていく意識の中、次はちゃんと言えるのかな、だなんて思ってやがて目を閉じた。

返事は、勿論――――


無限ループはまだ終わらない


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