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灯は部屋では変装を解いていつも通りのハスキーボイスだ。
だけど外に出ると彼女が夢見ていた通りの王道―――それもアンチ系の王道生活を謳歌しているらしい。

自分でそんなことをしておきながら職務怠慢だわ、何よあのチャラい会計は!!可愛すぎるのよなど意味不明なことを呟いてる。
他にも副会長は私より綺麗でムカつくわ、書記はとりあえずペットにしたいなど言いたい放題だ。
王道ストーリーを一学期間で、残り一か月で完成させなきゃいけないからと早々に変装を取りその姿を披露している。
俺とは違い、その愛らしい姿で周りをメロメロにさせているのだ。

でもやはり親衛隊から凄い制裁が来たら最悪強姦だし、女の子ってのがばれちゃうから程々にはしてるらしいけど。
確か灯から聞いた話だと同室者も巻き込んで、脇役として僻まれて制裁されたり虐められる。
だけど俺をそんな目に合わせたくないし唯一素を出せる私室には居れたくないからと俺に被害は無い。

クラスの友達には転入生と同室で大丈夫なのかと言われるけど全然大丈夫と答えている。
灯はやっぱり女の子だから料理とか家事が得意で俺の部屋の掃除もしてくれるんだ。
もう楽で仕方がない、このまま居てくれればいいと思ってしまうほどだ。

「輝ー?今日の夕飯何がいい?」

「んーと、ハンバーグ!!」

「もー可愛いわ、可愛すぎる!!」

「・・・大丈夫?灯」

ちょっと心配だけど鼻歌を歌いながらもその手はてきぱきと動いている。凄い。
俺はそれをテレビを見ながら待っている、のがいつもの夕飯だ。

そして暫くするといい匂いがキッチンから漂ってきて、思わず立ち上がり駆け足で向かう。
肉汁たっぷりのハンバーグにデミグラスソースがかかっており食欲をそそる。
運んでおいてと言う通りに綺麗に盛り付けられたお皿を運んでいく。

見た目通り美味しすぎるそれをすぐに完食し、お茶を飲んで一息。
お皿洗いは俺の役目なんだよ、えらいだろ。

「ねぇ輝、会長がなかなか手強いのよねー」

「あーあの人生粋のゲイでもう両親にも許可貰ってるらしいよ」

「え、そうなの?あー・・・だから感覚で私はそうゆう対象から外されてるのか」

「残念だったね。それにしても会長の両親も凄いよね、確かに長男じゃないからってさ」

そういうとまあそれはそれで面白いわ、と可愛らしく笑った。
内容が内容なのでそう言うのもちょっと戸惑われてしまったけれど。
ぼそりと俺はノンケだってかまわないで食っちまう人間なんだぜ、ってわけですかと頷いた灯は怖かった・・・

「でも私にお熱でも会う時間を作るために仕事を凄い勢いで片付けるの。王道と違って」

「灯の言う王道は仕事も生徒からの信頼も投げ捨てて転入生に入れ込む生徒会役員だったっけ?」

「そうよ、まぁ現実的に考えればこの学園の生徒会で良かったけどね」

なんでと聞くと王道の生徒会役員だったら一学期で自分は学園を退学するけど、退学しても一緒だよとか言いそう、だって。
それって最早ヤンデレのストーカーじゃないかと思ったけどとりあえず王道と微妙にずれててくれてよかった。

「ハァ・・・でも会計から夜のお誘いが思いのほか強烈で疲れるわ」

「えっ!?大丈夫?」

あの人はバイで男でも女でも気に入ったらとりあえずゴートューザベッドな人だから危ない。
もし灯が女の子だって知っても笑ってそのまま抱きそうだから余計怖いんだ。

「大丈夫、会計も流石に無理強いはしてこないし副会長が汚らわしいって守ってくれるから」

それ、守ってると言うより単純に会計の性事情をだらしないと言ってるだけな気もする。
結果的に灯を守ってくれてるし、副会長も灯をそんな男には渡したくないと思ってくれているのだからうん、おっけー。

「あーあーやっぱ会長からアプローチが無いってのが辛いわ」

「なんで?」

「私を巡り会って風紀委員長と喧嘩!その後に二人はケンカップルとなるのよ・・・ウフフ」

「へー」

「あと何だかんだ言って自分を支えてくれる副会長の存在に改めて気づいてあららな関係になるの!!」

あららな関係とは一体なんぞやと思うけど妄想に浸っている灯の妨害など以ての外だ。
昔、というか灯の趣味を知ったのは無遠慮に灯の部屋にノックなしで勝手に入って机に広がる漫画を見たからだ。
その時は俺に気持ち悪いって言われるかもと記憶を飛ばさせるために大声で罵声され、頭を壁に叩きつけられた。
勿論漫画とはボーイズがラブしちゃうやつで、壁に叩きつけられたと言っても動揺してた灯の力は弱弱しかったけど。

「やっぱ私は会長は攻めね・・・でも委員長とは・・・っ!だめよ、リバは!!いや、いいわね」

「戻ってこーい」

灯は、現実世界からログアウトしました。


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