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全寮制の男子校、菊花学園2年生の結城輝(ゆうき ひかる)は平凡だ、と自負している。
しかし、何をとち狂ったのかは知らないが学園に入る前に俺の双子の姉は危ないと変装を強要してきたのだ。

その為一年生の時から変装しているのでこの暑苦しい髪形を直すことが出来ないのだ。
毎朝目元の泣き黒子を隠しその上黒縁の眼鏡をかけ、伸びすぎた髪を多少は整えるも前髪はそのまま。
最早後ろの方の髪と同じぐらいだと言うのに困ったものだ。

この学園は美形が60パーセントと半分より少し多めに占めているので美形が優遇されている。
何故こんなにかっこいい人、男に言っていいかわからないが可愛い人が集まってるのだろうか?
きっと彼らのお父さんはコネを使い女優さんとかと結婚したり、金に寄せられた女の人は沢山で選びたい放題だったんだろう。
と勝手に解析してるけど、まあ俺の家は少なくとも上記の二例には当てはまらないのだ。

父さんの会社で秘書してた母さんに一目惚れして社長専属の秘書にしちゃったんだってさー職権乱用。
そんでおめでたいことに結ばれて恋愛婚出来たらしい。
お祖父ちゃんとか確かにあんまり良い顔しなかったらしいけど、凄いよね。
まあこんな感じで金持ってようが平凡も産まれてきちゃうわけなんだ。

余談はここまでにして、学校の説明を続けよう。
生徒会長とか専門委員会の委員長とかは普通に選挙で決められる。
委員長まで選挙するのはちょっと変な気もするけどこう、責任感がどうのこうのらしい。
そんで生徒会は会長が他の役員を指名、専門委員会は委員長が副委員長を指名する。

親衛隊とかそんな夢物語、って言われるかもしれないけど美形にはあるんだよねー。
何故か生徒会長はかっこいい人が選ばれるから親衛隊も凄いんだよね。
恋愛的意味でも憧れでも親衛隊に入るらしいから。

あ、そうそうここは結構同性愛とかある方なんだよね。
俺みたいに高校生からって人も居るけど幼稚園からこの学園って人も居るらしい。
だから周りに男しか居なくて自然とそうなるらしい。
まあ長期休暇で外に行けば女の子も居るから両刀の人が大半らしいけど。


「ひーかーる!早く行かないとお昼の時間なくなっちゃうよ?」

「あ、ごめん」

ぼーっとしてたら何時の間にかお昼ご飯の時間になっていた。
友達に連れられて食堂へ行くとやっぱり人が沢山でもうちょっと早く行けばよかったと反省。
でもちょうど席を立った人たちがいたのでさっとそこに座る。

美形が優遇されていると言ってもそれは主に役持ちの生徒会とかぐらいだ。
10人いたら二人美形が多いだけなのだから平凡な奴らもいっぱいだ。
だからかっこいい人と一緒に居てもそこまで怒られない。
そりゃ過激派とかもあるけど、今年の生徒会が親衛隊の規則を作ったらしいので派手なことは出来ない。

「そう言えば転入生来るんだって」

「へぇ・・・珍しいね、この時期に」

「だよね、6月の半ばとか・・・あと一か月で夏休みだよ」

そんな雑談をしても、すぐに趣味の話とかに移って行ってあんまり覚えていない。
思い出したのはただ、転入生が来ることだけ。

そう、目の前に瓶底メガネのもじゃもじゃ頭さんが居るのですよ。

「えっと・・・初めまして、結城輝です」

「・・・・」

部屋の前で、扉に寄っかかりながら体育座りしていたのでとりあえず中に入れた。
俺は一人部屋だから転入生が来る場合どうのこうの言われた記憶があったし、昨日の会話で転入生かと納得。
なんか髪とか凄いなーと思ったけど見た目であれこれ言うのは俺も普通の見た目だからあんま言えないのでとりあえず挨拶。

「ねぇ、輝・・・」

あれ?なんか聞き覚えのある声がするのだけど、どうゆうことだろう。

「なんで気づいてくれないのよっ!!馬鹿!!」

「ごめん、灯!!」

自然と口から零れ落ちた名前に自分でびっくりした。
この声は確かに灯のものに似ている、そう―――姉に似ているのだ。

「あ、なんだ気づいてたの」

女にしては低いハスキーな声、男勝りな軽快な性格、時々上げる奇声。
最後のは余計だったかもしれないが、大まかに姉を紹介するならばそれしかない。

「なんで灯がここに居るの?ここ男子校だよ?」

もじゃもじゃの鬘と眼鏡を外し、セミロングの髪の毛を縛っていたゴムを外すといつもの灯だ。
確かに服装はブレザーにズボンだからあれだけどそれでも似合ってるあたりやっぱ灯は凄いなーと思う。

「輝が心配で来ちゃった」

「ハスキーボイスで言われても・・・でも女の子が」

「ハスキー言うな!!大丈夫、一学期で辞めるから」

頭を叩かれながらだったのでワンモアプリーズしたのだけどまた頭を叩かれた、酷い痛い。



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