覚悟さえ決めてしまえば行動は素早く。
せめて不意打ちで何かして倒されてる奴らを逃がしてやりたい。
焦る気持ちを抑えて、身をかがめて小走り。
そうやって木更津達との距離を縮めてる間に、ふいに悲鳴が消えた。
咄嗟に目の前の木に隠れて身を潜めるようにしゃがむ。
地面に倒れる不良達。
悠然と立ち尽くす木更津真弘。
一人、まだ力があったのか倒れながらも見上げるように頭を上げる。
その瞬間、木更津の足がそいつの頭を踏みつけ地面に押し付けた。
喧嘩は終わったが、風紀としての務めがある。
見つかることなど気にせずに立ち上がる。
すると木更津は俺に気付いてるだろうにもう興味など失くした顔して、何事もなかったように帰ろうとしていた。
多分倒れている奴らから先にふっかけたのだろうが、あまりにも可哀想だ。
ああ、そうだこいつらもどうにかしなければいけない。
「おい、止まれ」
「・・・あ?」
威嚇されようにも、もう覚悟など決めているし木更津程の相手で無いにしろ荒事は何回も経験しているので怯まない。
それにこういうのは先に怯んだら負けなのだ。
「風紀だが、これはどういうことだ?」
「見たまんま。呼ばれて行ったら喧嘩売られた」
思いのほか普通に会話が続いたことに少しだけ驚きながらも、事情聴取。
そうこうしていると先輩方が後方から俺らを認識したとの連絡が入ってきた。
「今他の風紀が来る。大人しくしろよ」
「めんどくせぇ。帰る」
「大人しくしろっつっただろ」
引き留めるように肩を掴むと勢いよくふり払われる。
しかしそれでよろめくほど鍛えてないわけじゃないので、気丈に立ったまま再度ここにいろと言いつける。
だと言うのに木更津は欠伸をしてここを立ち去ろうとする。
もう一度肩を掴むと拳が飛んできて、咄嗟に腕で防御するも痛みが凄い。
その様子をようやく辿り着いた先輩方が驚いた様子で見ていた。
慌てて木更津を俺から離すともう行け、とでも言う様に手を動かした。
木更津はその手振りさえ見ていなくて、勝手に帰っていった。
「大丈夫か」
「はい。すいません、途中で止めたかったんですけど」
「いーんだよ、それより倒れてるの回収」
「了解です」
それから手分けして倒れている奴らを保健室に運ぶ。
俺も手当てしてもらって、事情聴取に参加する。
曰く、木更津をぶちのめしたかったらしい。
あんまりにも率直な言葉に、なんかいっそのこと清々しいとさえ思った。
木更津は問題を起こしていないとされる。
しかし、呼び出されれば確実に来てくれるらしい。
律儀なやつだなぁと思わず感心してしまう。
とゆうわけで木更津は自分からふっかけることはない。
しかし、呼び出されれば向かい、なんてことの無い様に相手を返り討ちする。
それが王道パターン。
こいつらの仲間みたいな奴等も木更津に集団でいっても負けたらしい。
やはり自分から負けたというのは嫌なので木更津と喧嘩したことは基本的に黙秘。
その為に問題は起こしていないとゆうことになってるわけだ。
まぁ自分から喧嘩は売らないらしいのでそこはいいけれど。
とゆうかむしろ今まで一度も風紀に見つからなかったのも凄い。
今まであまり名前が挙がらなかった木更津だが、今後は違う。
委員長や顧問も腕を組んで悩んでいた。
俺もなんとかしたいとは思うが、正直どうしようもないとも思ってしまう。
相手に呼び出されたのだから、一応被害者という立場になるので。
しかし、木更津を潰せばどうのこうのなど賭けの対象にもなっているらしく、不良同士の喧嘩がなくなることはないだろう。
もういっそのこと全員さっさと潰せよと思ってしまったのは仕方ない。