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周りの喧騒から避けるよう脚を動かす。
そうして辿り着いた緑の多いその場所は、美しい場所ではあるけれど悲しいことも起きやすい場所である。

陽が燦々と降り注ぎ辺り一面を輝かせ、光を浴びた植物達は嬉しそうにその身をより光に近づかせようとしている。
大きくそびえ立つ木々に囲まれながら、大きく伸びをする。
ここしばらく忙しかったのでこうしてゆっくりできることが嬉しい。



ここは都心から離れた場所にあるために自然が多い。
この学園は全寮制で広大な土地を確保するために山奥、ではないが都心に近いわけでもない場所にある。
だが凄く遠いわけではなく、一時間半程で都心に辿りつけるような場所だ。
地方から都心の学校に行く学生も昨今では多いみたいだし、それと同じようなものだと考えれば一般的だろう。

その上、外泊やら外出は門限さえ守れば自由。
管理の関係上門番のところで名前を書いたりするがそれだけ。
親が居ないし、楽しんでいる生徒は沢山いるだろう。

しかし、ここで少々いただけないことがある。
それこそがこうして俺を疲れさせている原因なのだが。

どこにでもありそうな校訓だが、全寮制で生活習慣の乱れの改善。
これに目を付けた、既に息子たちの教育を諦めてしまった親が中学時代にやんちゃをしていた者達に勧める。
そして息子たちは親元から離れられると喜んでこの学校へ入学を決める。

この流れのもと、些か、偶に度を越したものもいるけれど不良が多く集まる。
(まぁ度を越していたら容赦なく退学させるのがこの学校のいいところだと思う)

だが決してこの学園の生徒の全てが不良ではないのだ。
全寮制なのでなんらかの家庭の問題がある者。
意外とスポーツに強いので3年間スポーツに打ち込みたい者。
そんな者達にとって好都合で、一般人も数多く集まるのだ。

割合としては不良:一般人=4:6ぐらいでまだ一般人の方が多いとはいえ、そろそろ5:5になってしまいそうなのが怖いところだ。

そしてもう一つ。
男子校とゆうことで同性愛者が多い。
異性に触れる機会は普通にあると思うのだが、郷に入っては郷に従え、それに忠実に従ってしまった結果だろうか?

いつからこんな伝統みたいなものが生まれたのかはわからない。
同性愛を否定するつもりはないけれど、俺自身の性癖として言えば異性愛者なので少々複雑な心境である。



不良と同性愛者。
俺が風紀委員になり、主にこの二つの問題に苦しめられている。

風紀委員は各クラスに一人、ではなくて委員長や顧問の教師からのスカウト、もしくは立候補制になっている。
ちなみに俺はスカウトされたほうだ。
勿論断ることもできるが、この学園の惨状に俺も手伝えることがあればと思って受け入れた。

予想外に夏休み明けの代替わりの時期に副委員長に選ばれてしまったが。
それはもう仕方ないし、これも承諾したのは自分自身だ。

風紀を司り、校内環境の整備をする。
ここまでは普通だが、大人の警備員達と共同で不良同士の喧嘩やカツアゲの防止、強姦などの性暴力の食い止めも仕事だ。

不良同士の喧嘩はもう勝手にしてくれと言いたくなるけれど、兎にも角にも面倒なことがいっぱいだ。
そんなこんなで残念ながら容量は一般的な普通の人間である俺には頭を相当悩ませないと解決出来ない問題との格闘の日々を送っている。

自分のことで手一杯だし、したいと思うことに対しての努力は勿論するけれど、あと一歩のところで届かないことも多々ある。
それは元が普通であるから仕方がない。
むしろ俺の取り柄と言えば精々真面目なのぐらいだ。
自分で真面目というのもどうかと思うが。

ついでに言えば俺は見た目も平凡だ。
鼻筋は通ってると思うが一重で暗めな肌色に真っ黒な髪。
髪の毛はくせ毛で剛毛なので寝癖がつきやすい。
なのでいつもは髪を後ろに撫でつけている。

風が吹き、ワックスをつけている短髪で微妙に隠れていない首筋の汗が冷えて気持ちがいい。
ハンカチなどは残念ながら持ち合わせていないので手で拭った。

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