抱かれれば終わり。
だが当然だが抱かせるつもりもない。
「面倒だけど、ずっと付き合ってればいいか」
もしも、本当にもしも。
その時は腹をくくらなければいけないが、なるべく避ける方向で。
詳細はわからないが、不良達の暇つぶしで罰ゲームが行われている。
俺を抱かない限りそれは終わらないということだが、ならば終わらせなければいいのだ。
卒業まで付き合い続ければ俺以外に被害が出ない。
先程まで怒りがあったが、それはもう過ぎ去り諦めと面倒臭さが先行する。
そもそも純粋に疑問なんだが木更津は男を抱けるのだろうか?
俺は正直確実に無理である。
ここの男共は周りに女の子が居ない状況、更に謎の伝統で一過性の同性愛者になっているだけだと思っている。
だが街に出て遊び回っているとの噂が本当なら、異性愛者だと思う。
更に言うならば、あのルックスだ、相手にも困らないだろう。
そうして、きっと質の悪い冗談だと高を括ってその日を終えた。
「…なんでいる」
「あれだ、あー、運命ってやつだ」
「馬鹿だろ」
屋上は風を強く感じるので本日は自分しか知らないと自賛している場所で昼寝をしていた。
最近曇っていることが多かったのだが今日はとても晴れていて、風紀の仕事も早く終わったので放課後にわざわざ来たのだ。
ポカポカして疲れた体を癒すのにちょうどよかったのに。
微睡の中、争うような声が聞こえ起き上がれば、少し離れた場所で負けたであろう不良が肩を抑えながら校舎のほうに向かっていった。
不良同士の喧嘩なのか一般生徒が巻き込まれているのか近づこうとしたとき、後ろから肩をたたかれ、目の前には木更津。
というわけで最初の会話に戻る。
「なんかこんな森のほうで会うって密会してるみたいじゃね?」
「頭沸いてるだろ」
「コイビトにひどいこと言うなよー」
「罰ゲームだって自分で言ったろ」
「おっ、抱かせてくれんの?」
「死ね」
つい感情的になってしまうのをどうにかしなければいけない。
熱くなっていることを自覚し、抑えられるのでそこまで馬鹿になってないことだけが救いだ。
「イエスかハイで」
「ったく、お前は一生俺と付きあっときゃいいんだよ」
「ん…?どういう意味?」
「ようは、抱かせない限り罰ゲーム終わらないんだろ?なら一生付き合えよ。ちなみに、浮気は厳禁な」
ここまで言えばどうにかして別の方法で罰ゲームを終わらせようとするだろう。
屈辱だが抱かれたってことにしてやってもいいし。
当然本当には抱かれないけど。
そう自己完結していれば笑い声が聞こえた。
それも物凄い大きい笑い声。
爆笑と言ってもいいかもしれない。
「…おい」
「さいっこうだな!一生付き合おうぜ!」
木更津が理解できない。