16

あのデートから約一週間。
木更津はサボっているのか授業に出ているのかは不明だが、屋上に来なくなった。
更にメールやラインもなくなったので、ようやく暇つぶしか罰ゲームは終わったと判断してもよかろう。

平和な時間を噛み締めて、今日は優雅にお昼寝だ。
最近昼休みでさえ風紀室に篭って書類仕事をしていたため、木更津のと相まってさらに開放感を感じているところである。

それにしても屋上がとても気持ちが良いとはいえ、こう頻繁にくるのもダメだな。
しかも少し肌寒くなってきていたし、いい機会だと思ってまたべつの昼寝スポットを捜すのも楽しそうだ。

長袖のシャツとインナーだけでは寒くて。
それでも身体を丸めれば暖かいし、疲れからかすぐに意識が遠のいた。



違和感。
そして、それから。
少しだけ感じた何かに、ハッと目を覚ますと。

「よう。良い夢見たか」

「・・・最悪だ」

「は、エロい格好して」

「あ?って、なにしてんだテメェ!!」

「キスしてデートも済ませたらあとは、なぁ?」

「外ですんなよボケ」

状況の整理を優先。
落ち着け。
冷静な心持ちが大事だ。

深く息を吸って、吐いて。
とりあえず木更津と距離をとってから思考を巡らせるのだ。
当然、圧倒的な情報不足に困惑しかできないのだけど。

「で、なにしてた」

「それよりエロい。続きすっか?」

指さされた場所を見れば、胸元の一部が水分的なもので濡れて、

「お前何した!?」

「だから見たまんま。開発してやるから待っとけ」

「ふざけるな」

そろそろ授業開始五分前のチャイムが鳴る。
それを目安にクラスに戻らねば間に合わないし、だけどこんな格好でなんて。

「これ着てろよ」

「なんで」

「それ隠したいだろ?」

無理矢理羽織らされたカーディガンは夏用の薄い生地で、風通しも良いが胸元のは隠してくれるという優れもの。
ないより遥かにましだと、これの唯一の欠点である木更津の所有物というとこを考えないように。

「また、あとで話しを聞かせろ」

「いやだから、」

「うるさいお前も授業に出ろ!」

「・・・おう。わかった」

ニヤニヤした面が本当にムカついたので頭を下げ叩いてやる。
それから蹴りもいれて、素早く階段を降りていく。

殆ど二段飛ばし、最後は四段飛ばして。
常より血流が良く回って身体が熱いのは、きっとこうして走ってるからだ。

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