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店から出た後、どこに行くかなど一切考えていなかった俺達は近場にあったゲーセンへと向かった。
妹に連れられて、あれとってこれとってと付き合わされた結果クレーンゲームは割と得意だ。

「とりあえず来たけど・・・何かやる?」

「クレーンゲーム」

ゲーセンには勿論他のゲームも沢山あるが、上記の理由でクレーンゲームばかりしてたのでそれ以外よくわからないのだ。

簡素に答えてクレーンゲームのある場所へ向かい、どうしようかと透明な箱の中身を吟味していく。
暇つぶしだし、この後も歩くだろうから荷物になるのは遠慮したいところだ。

すると、最近人気のゆるキャラのぬいぐるみが景品のやつの前で女の子が百円玉を積み上げて挑戦していた。
どうやら腕前は残念な模様で、苛立ったようにもう一回機械に百円玉を飲み込ませていた。

「どれにすんのー?」

「あれやってくる」

突然止まった俺に不思議がる木更津。
やるものが決まったのでそう宣言すれば大人しく俺の後ろに付いてきた。

あのゆるキャラのものは女の子がやっている隣にももう一台あったのでそこに向かう。
取りやすいものを、狙いを定めてクレーンを操作していけば、ほら。

「あの、これいりますか?」

「へ、わたし・・・?って、いいんですか!?」

「暇潰しにやっただけだから貰ってくれると有り難い」

「ありがとうございます!!」

あの積み上げられた百円玉は、もっと別の事に使用して欲しいと思いながら頭を下げる女の子に軽く手を振って別れた。

「へぇ・・・かっこいい」

「ゲームにあんな金かけるなんてもったいないだろ」

「いやー、一発で取っちゃうとか流石だね」

「うるさい。これからどうするんだ」

「じゃーこれ取ってよ」

木更津が指差したものに無言で金を入れてゲームを始める。
ちょっとしたお菓子の詰め合わせで、これもまた簡単にクレーンの上に乗った。

「ほら」

「ありがと。上手いねぇ、こーゆうの」

「まぁ、昔沢山やってたから」

へー、と興味あるんだかないんだか分からない返事に、そっと溜息を吐いた。
ほんと、なんで俺と付き合うだなんて言ってきたのやら。
罰ゲームだとか予測はついてもよくわからないことだらけで。

「あ・・・お前の口調どうした?」

「いきなり何さ、変?」

「初めて会った時と変わりすぎだろ」

「乱暴な方が好き?」

「好きも嫌いもあるか。ただ今更だが驚いた」

素直にそう言えば、端整な顔を歪めた笑みを浮かべる。
こいつの笑い方、本当に悪そうだな。

「こっちのが印象いいかと思って」

「どっちでも最悪だ。なんか気づいたら気持ち悪い。戻したらどうだ?」

「んじゃそうする」

この端整な顔立ちの男があの喋り方だとなんとなくだが、胡散臭さが酷いのだ。
あの喋り方の木更津の方が長いとは言え、そういうわけで気に食わなかったので素に戻るというのなら一安心である。

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