11

朝が来た。
天気は快晴、最高のお出かけ日和。
精神のコンディションは最悪だけど。

仕方ない、約束だから。
そう何度も自分に言い聞かせて、適当に外着に着替えた。
デートだなんだという名目はもうどうでもいい。
俺はそう思っていない、それでいい。

さぁ、行こう。

11時に学園の前にあるバスの停留所で、たまたま同じバスに乗ってしまったんですよ、なんてアピールをしながらの待ち合わせ。
俺らが普通に喋っているのを学園の生徒に見られたらと思うと、頭の痛くなる未来しか見えないから。

学園の生徒数人はいたけれど、バスに乗っている間は離れた席に座っていたし俺らの繋がりなんか感じなかっただろう。
木更津がいることでほぼ全員ビビってたから、バスに乗っていた間の記憶ぜんぶ抜け落ちているのかもしれないけど。ご愁傷さまだ。

そんなこんなで昼頃に都心についた。
ここからは、一応デートとやらなので他人のふりはダメだろう。
どちらにせよこんな人混みの中だ、目立つことさえしなければいい。

「藤下さん、手繋ぐ?」

ああ、早速心が折れそうだ。

「ふざけるな。何処へ行く?」

「飯食おっか」

行きたかった店あるからそこでいい?、と言ってきたので頷く。
主に買い物でしかわざわざ都心には来ないのであまりわからないのだ。

隣を歩く木更津は、美丈夫という言葉が一番似合う。
本当に見た目で得しているよなぁと思いながら歩いていると、奴はモデルのスカウトに誘われている始末。

おい、睨むのはやめろ。

スカウトしに来た人に憐憫を感じながらも、少しだけ並んでいる店の前へ到着。
なかなか洒落たところで、こいつは普段からこんな店に行っているのかと新たな発見、なんかしたくもなかった。

「ちょうど昼時だから、待つね」

「そうだな」

「ここら辺来る?」

「買い物でなら」

木更津の質問にひたすら答えていれば、何時の間にか順番が来ていて。
時間が経つのが早いなぁ、なんて思いながら席に着いた。

「何にする?」

「・・・ハンバーグ」

「好きなの?」

「割と」

そっか、と笑う木更津は店員さんを呼んで注文。
店員さんの頬が赤いのはもう何も言うまい。

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