非常に、非常に苛立たしいことではあるが俺の負けだ。
それ自体は心底憎らしいものの、仕方がないと納得も理解もしている。
だが、それでもこの胸をざわつかせるものはあの木更津の眩しすぎる笑顔のせい。
今日も相変わらず整った憎たらしい笑顔なのだが、何故こちらを見ているのか。
審判がゲーム終了の挨拶のため俺たちを整列させたとき、向かいにわざわざ来た上にあの笑顔。
不愉快、よりは純粋に疑問が湧き出るものの、こっから先はお仕事タイム。
ま、ある意味負けてしまったことで体力温存出来ているので頑張れる。辛い。
「んじゃ、俺委員会の方に戻るわ」
「頑張れよー。もし来れたら俺らバスケのほう応援行ってるから」
「時間あったら見に行くよ」
またまたクラスメイトとは少しの会話だけですぐバイバイ。
交流少なすぎるけど、友達出来てよかった。
しみじみ考えながらも足は素早く動かして、つまりは猛ダッシュ。
悪い子はいねーかー?なんてどっかの祭りのように、とか冗談やってる暇もなし。
到着した問題児隔離部屋の前に佇む他の委員に状況を聞いて、俺は書類整理の方へと向かうことに。
今まで協議してたから室内での仕事は嬉しいものだ。
と言っても見回りはもう一回あるのだけど。
そんなこんなでそのまま風紀室へと向かう。
「・・・委員長、楽しそうですね」
「おう。今日は暑いからな」
「俺にもスイカバー下さいな」
「ほい、お疲れさん」
投げ渡されたアイスはキンキンに冷えてて気持ちがいい。
というか風紀室冷房ききすぎだろ。
室内には委員長、他2名しか居ないくせに。
「午前いっぱい取り締まったから午後はまだましだ」
「そうみたいですね」
ちょっぴり皮肉気味に。
ああ、問題児隔離部屋の前で、顔を真っ赤にして暑さに耐えていた委員になんと言えばいいのだろう。
これは確実に秘密だな。
「そういや木更津がまともに競技に参加してたらしいけど」
「ああはい負けましたよ」
「いやいや、うん、それはご愁傷様。で、珍しいな」
「そうですね。まぁ、意外と大人しいじゃないですか」
「あとは見た目さえまともになってくれればなぁ・・・」
「そのレベルだったら他にもいっぱいいますけどね」
「木更津を改心させたってなったら他のにも影響あるだろ」
考えてみる。
確かに木更津に憧れるもの、対抗するようなもの、多々居る。
本人は何もしてないのだろうけど、存在が様々なのに影響を与えてしまう。
なんて厄介な奴なんだろうか。