午前に大量の違反者を捕まえたおかげか、午後は大人しくしている者が多かった。
仮に捕まった奴らと同じ轍は踏まない、という知能犯が居たら正直にむかつくが、見つけられないのはこちらなので仕方ない。
そんな奴らが居なけりゃ一番だが、居ない、なんて絶対に言えないのがこの学校の生徒ってものである。
見逃すものかと注意深く幾つもの教室を見回しはや一時間、最後の教室も何もないことを確認してから校舎を後にする。
そろそろ試合の時間であり、見回りの交代時間なのだ。
足早に会場へ向かうと人数確認が行われており、慌ててクラスの輪に入った。
一息ついて対戦相手を見ると、まさかの木更津。
「・・・ぜってぇ勝つ」
「ん?どうした」
「何でもない。あ、外野頼めるか?」
ニタニタと笑う顔が憎くて、思わず口が悪くなった。
普段はある程度は丁寧な口調を意識しているので危なかった。
話かけてきたクラスメイトの意識を上手く誤魔化し、気合いを入れ直す。
とりあえず顔面狙っていこうか。
こんなこと考えてるとは思っていないのか、木更津は挑発するように手を振ってきた。
それに当たり前に無視をしたのだが、おい、そこの何でキャーッて女子みたいに騒ぐんだ。
風紀の敵の不良、そして平凡の敵のイケメンという二つの勲章を持っているクソ野郎はここで沈める。
一人頷いて、その瞬間に開始の笛が鳴った。
ジャンプボールで、相手チームにボールが渡る。
いかにも筋肉質な体育会系の奴は速いボールを投げ、うちのクラスは早速一人当たってしまった。
その後は暫く誰も当たることなくボールの応酬が続く。
こちらにもボールが渡ってきて相手方に投げ込むのだが上手く躱されてしまう。
それは俺らもなのでキャッチしたり躱したり出来ているのは良いが、当たらないのが心底ムカつく。
そして試合時間が半分を過ぎたぐらいで互いに数人当たってコート外へ出て行く。
今の所コート内の人間は同人数、人が減って逃げやすいのかまた当てにくくなった。
ちなみに木更津に数回投げ込んだのだが笑いながら躱されてしまった。
俺のクラスで一番ハンドボール投げの記録が高かった柔道部の力強いボールを難なくとっていたので完全に遊ばれている。
更に苛立ちは募るがあくまでも冷静に。
別にあいつはどうでもいい、他を当てて勝てばいいのだ。
ちょうどボールをキャッチして、後ろを向いていた奴の背中に思い切りボールを投げ込む。
これでまた一人コート外へ出て行った、人数は、
数えようとした瞬間目の前にボールが迫り、何とか取れたと思ったそれは勢いの余り手から弾かれて取りこぼしてしまった。
邪魔になることはわかっているので素早くコートから出て行く。
このボールを投げたのは、ああはいはいわかってる。
もういい、ずっとこっち見てて早く当てられろ。
むしろそのままで居てくれれば顔面にボールめり込ませてやるのに。
と、外野の方にボールが回ってくることを前提に考えていたのだ、俺は。
だがしかしそこから始まったのは木更津の独断場。
物凄い球速で当たった衝撃でボールは跳ね返り再び木更津の手の中に。
それが2、3回繰り返され、やっと俺らのクラスにボールが回り渾身の力で投げ込んでもあっさりとキャッチされてはい終了。
反撃の機会もなく、無情にも終了の笛が鳴り響いた。