ひしひしと視線を感じながらの食事タイムは今尚続いていて。
気まずさしかない上に、折角の休憩時間に全く心が休まらないという由々しき事態となっている。
ああ、次の試合は主に八つ当たりとして頑張ろう。
次に当たるクラスよ、悪いのはこんな日に暴れる不良と木更津のせいだ。
だからそいつらを恨め、なんて考えてたら自分でもわかるぐらい目付きが悪くなってきた。
目の前に居る男にそんな目付きで、更に意図的に睨め付けるのだが、へらりと笑われただけだった。
全くなんて恨めしいんだこの男は。
ちなみに唐揚げを一個食われたので憎さ倍増だ。
だが兎に角現在進行形で疲労が溜まっているため、イラつきを感じるより呆れと言った方が良いだろうか。
怒りにはエネルギーが要るとは本当で、今は気力はない。
「今日のさ、藤下さんのクラスの調子は?」
そんな折、ふいに尋ねられる。
まぁこのまま無言でいるよりは良いかと今咀嚼してるものを嚥下してから口を開いた。
「他の競技は知らねーけどドッチボールは順調に勝ってる」
「すごいね。てか藤下さんもドッチボールなんだ」
「お前もか。反則したりサボったりしてねーだろうな?」
「してないってー。してたら俺ここに居ないし」
それもそうかと頷きながら、食後のデザートに買っておいたコーヒーゼリーを袋から探す。
あれ、確かに買ったはずなんだけど、どこいっ・・・
お前か木更津死にさらせ。
悪戯に取っただけなのか、睨めばすぐに返してきたので小さく溜息をついてからスプーンを手に取りいただきます。
これ食ったら軽く昼寝でも、と思ったけれど生憎とそんな時間も無いらしい。
なので仕方なしに木更津との会話を続けることにした。
俺はあいつの冗談を適当に受け流すだけ、あいつは軽い言葉しか口にしないので良いだろう。
「あ、ねぇ、さっき俺のクラスも勝ち進んでるって言ったじゃん」
「それがどうした?」
「多分そろそろあたると思んだけどー、賭けしよ?」
「なんでそんなこと」
「俺が勝ったらデートね。んで、そっちが勝ったら二日か三日ぐらいは大人しくしててあげる」
「二日か三日って少な過ぎだろ。いつも大人しくしてろよ」
「じゃあ一週間は?」
「それなら・・・いい」
俺の返事に木更津は満足気に頷いて、口を閉じた。
俺はと言うと食べカスやゴミを集めるために下を向いていて。
顔を上げながら、冗談めかして本当に大人しく出来るのか?、と声に出す。
しかし、視界には教室に置かれた机しか入らず。
・・・いつの間に消えたんだあの不良野郎。
本当に自由な奴だ。
言いたいこと言ってさっさと消えるのに多少腹が立つが、所詮時間潰しのコミュニケーション。
かくいう俺も時間なのでそろそろ教室から出て行こう。
勿論バレないようひ少し身を屈めてだ。
しっかりと施錠しながら先程の賭けについて考えてみる。
はて、俺が負けたらなんだっただろう?
早々に忘れたが、負けないし絶対勝つからいいやと思考をリセットする。
とりあえずあいつのクラスと当たった時はあの顔面に球をぶち当ててやろう。
その為にも一仕事片付けなければ。
無線から聞こえる応援要請に応じるため、早足で廊下を駆けて行った。