ようやく吐き気だったり頭痛が消えてきたころ、屋上の扉が開く音がする。
それに少し遅れる感じで授業の始まりを告げる鐘が鳴った。
「・・・誰だ?」
「よお、さっきぶり」
「何しに来た」
給水タンクにのぼる梯子からひょっこりと顔を出したのは木更津だった。
証拠隠滅にでも来たのだろうか?
ああ、写真を消せと言われるかもしれない。
でも既に風紀室にある自分専用のノートパソコンにデータは送ってる。
副委員長になって専用のものを貰ったのもまぁ一種の特権だろう。
さて、兎に角こいつは何しに来たんだろうか。
気分の悪さはもう殆どないので横たえていた身体は既におこしている。
相手の出方を窺いながら対処しようと思うのだが、何もしてこないので逆に戸惑ってしまうのだが。
「なぁ、名前は?」
「・・・自分から」
「は?さっき俺の事名前で呼んでなかったっけ?」
「・・・・・」
「木更津真弘」
「藤下理人」
「よし藤下、付き合え、俺と」
「・・・煙草はやはり身体によくないんだな」
ちょっと、本気で、びびった。
いきなりなんだ、どうしたんだ。
話に脈絡がなさ過ぎて反応に困る。
もしかしたらそれを狙ってるんじゃないかと疑り深く真意を探してみる。
だけれど本当にわからなすぎて結果困惑という感情だけで埋め尽くされる脳。
まぁ、どちらにせよふざけているのは間違いない。
煙草の件をどうにかしたいから、こんな突飛な行動に出たのだろうか?
それにしてもどうしたらこんな発想に至るのか。
「冗談じゃねぇ、ん、そうか付き合うか」
俺の真正面に座った木更津が急に頭を掴んできて、まるで縦に頷いたかのように動かしてきた。
流石にムカついたので思いっきり払いのけると、凄く、機嫌が悪くなった。
てか考え込んでたから気付かなかったけど徐々に距離が縮まってる。
「っち・・・」
「これ以上遊びたいなら他を当たれ」
「おい待てよ」
おいお前舌打ちとか、冗談でも告白してる最中にはやめろ。
腕を掴まれてギリギリと力を込められる。
当たり前に痛い。
けど、なんとか振りはらって急いで屋上を出る。
三段飛ばしで階段を急いで降りて、ああそうだ授業だ。
ちゃんと荷物を持ってきた自分を偉いと自画自賛しながら後ろからこそこそと教室に入った。
ちょうど今は風紀の顧問である古典担当の教師だったので、軽く事情を説明したらすぐにわかってくれたのでよかった。
昼寝したのにこんなにも疲れがとれなかったって逆に凄いかもしれない。