相も変わらず眩い空を薄目で見ながら、寝心地の悪さで頭を動かす。
顔に、今日はかけた覚えのない布があたったところでいい感じに納得できるポジションを見つけたので目を閉じる。
意識がまだあるうちに強い風が吹き荒れ、その心地のよさで一気に突き落とされるように眠りに落ちた。
涼しいを通り越した冷気に身体が震える。
それでも頭部に感じる熱や、額を撫でるその温もりが心地よくて、こんな抱き枕欲しいなぁ、なんて考える。
寝起きで頭は呆けているし、最近の疲れからかまだ寝ていたい。
それでもなんとか目を開けてみる。
「おはよ」
「・・・今何時っ!?」
視界に広がるその顔よりも、今は時間の方が気になったので慌てて傍にある携帯を手に取り時間を確認する。
「・・・4時30分・・・」
「ねぇ、俺無視なの?」
ああ、今日俺見回りで良かった。
4時からだいたい1時間程度の見回りがあるために俺はきちんと仕事をしてることになっているのだろう。
ああでも今日の5、6時間目をサボってしまったけれど。
今日は何かあったわけでもないし風紀の特権も使うことが出来ない。
それにしても見回りのとき一回風紀室に顔だしてから、とかそういうルールがなくて本当によかった。
「ねーねー、そろそろ構ってほしいな俺」
「はいはい、うるせぇ」
「ひっど。俺彼氏なんですけどねぇ?」
「なら恋人が望んでることをしてほしいもんだ」
そういって静かに出てけという意味を込めて扉を指さす。
しかし、やはりいうことなんか聞いてくれずに。
キスって、何回したのだろうか。
こいつはとりあえずでも恋人同士のスキンシップ(笑)がしたいのか、会えば大体キスしてくるのだ。
合わさった唇のまま、そんなこと考えるのはまだ寝惚けているからか。
「膝枕とちゅーの感想は?」
「寝心地が悪い」
「俺の腹らへんに顔擦り付けてきたくせに」
「固いだけだった」
適当に言葉を返しながら、俺何してんだろうと心底思う。
寝ている間の行動を制御できないけど、それでも酷いだろう、それは。
あぁ、あの布はコイツのシャツか。
「おい、シャツの裾」
「いいじゃん別に」
ズボンに入れられることなく、だらしがない。
アクセサリーの類は好きではないのか穴の開いてない耳はいいと思うのだけど、やはり服装がなっていないのはダメだ。
本来見回りとかじゃなくて服装指導ぐらいが風紀の役目だよなぁ、なんて中学時代を思い出したりもしながら。
「ね、それよりデートしようって誘ったじゃん」
「・・・?一体いつの話だそれは」
「ライン送ったでしょ。既読無視しちゃってさぁ」
「ブロックされないだけましと思え」
ひでぇと笑う木更津の頭を軽く叩いて、別れを告げる。
こうやって会話をしていたらもう5時になりそうだったのだ。
急いでると言うと何も言わずに手を振ってきて。
まぁ、いい奴ではあるのかとは思った。
階段を降りて風紀室へ行く前にトイレへと向かう。
寝癖でさぼったのばれるのは嫌だし、髪の毛を直してく。
明日ちゃんと先生に謝っとこう。
服装も正していたときに、ふいに鎖骨の少し上あたりに赤い痕が見えて。
とりあえず木更津を殴ろう。