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どうしてこんなにも忙しいのかと聞かれたら答えはただ一つ。
近々開催されるスポーツ大会のせいだ。
授業も見回りをこなしながら書類整理、企画、対策、何をやっているのだろうと思ってしまうぐらいには忙しい。

というわけで今日とて来週火曜日開催のスポーツ大会の準備に追われている。
会場準備などは運営委員会と体育委員会が担当なので大したことはない。
まぁ、それにもある程度生徒会とともに関わっているけど。

しかし、ここで最大の壁となるのが不良達のサボる率の高さだ。
それに例え出席したとしても一般生徒を怪我させたり、反則混じりのゲームなど、どうしてかバイオレンスなものになってしまう。

毎年様々な策を講じているものの、あまり良い結果となったことはないらしく。
期日は迫ってきているというのに未だ目ぼしい案は思いつかない。

「誰か良い案ねえ?」

委員会中のミーティング。
漠然とした委員長からの問いに答えられるものなどいなくて。
これ以上時間も取っていられないので何の進展もなくミーティング終了。

俺も書類仕事を片付けながら考えてはいるものの、やはり良い案など思いつかない。
それ以上に目の前のやるべきことが多すぎるし、俺は複数のものを同時進行出来るほど器用な人間じゃないのだ。

そっと吐いた溜息。
俺と同じ心境の奴が何人もいるのか、それが複数聞こえてきた。

カタカタとキーボードを打つ音、見回りの奴からの連絡、取調室の中で暴れる怒鳴り声、心穏やかにすら慣れないこの場所。
使ってない部屋もあるらしいから取調室別に作ってくれねぇかな。

なんて思いながらも、そんなこと考えている暇がないのが現実。
ああ、手も止まってたし今のがいわゆる現実逃避ってやつか。

そんな時、ふいにノックの音がした。

「すいません、運営委員会の者です。委員長は?」

「はい、ここ!わりぃけどこっちまで来て!」

いろんな意味でカオスな部屋の現状に苦笑しながらも委員長の下へ行く運営委員会の奴。
途中で俺も呼ばれて追加の資料や、開会式での諸注意についてなどの話をして去っていく委員はいいとして、俺らには追加の仕事。

みんなカツカツの状態で追加の仕事とは厳しいけれど、やるしかない。
今日は見回りの奴らに早く戻ってきてもらうことにして、俺も渡された資料に目を通していく。

「・・・委員長、これ」

「何?読んで」

最早資料から目の離せない委員長の為に声を出して読む。

「スポーツ大会に正当な理由なく欠席した者に対する処罰について」

何でもない資料のように見えて、どうやら校長と理事の方々が集まって行事の特別ルールを設けたようだ。

要約してみよう。

・欠席者は反省文10枚と一教科の単位を全て落とす。
(ちなみに教科は成績が一番良いものにする)
・ルール等の反則者は教職員と風紀委員が下す処罰を受ける。
(程度については後日会議を開く予定。意見を纏めてくること)
・行事の時に暴力行為等問題を起こした者は即刻退学
(こちらもレベルを考える会議を開く予定)

「・・・ってわけです」

「はー、そりゃ、また思い切ったな」

「まぁ、確かにこのぐらいじゃないと大人しくならないのも事実ですし」

このぐらいしないと、ってのが悲しいけれど。
安全な行事を目指したいし、各々の競技に集中出来そうだ。


その次の日の昼休み。
理事達が定めたルール以外にも、運営委員会からの要望に頭を悩ませていた。
どちらとも必要なことだ、とは思うのだけど会議が行われることで資料の作成など仕事が増えたことも事実で。

それ以上に教職員の顔がやつれている以上、何も言えないのだけど。
顧問に1週間で3キロ痩せたと言われて時にはさすがに戦慄した。
生徒の自主性などを尊重させるのはいいが、それによって振り回されたり何かあった時の責任はやっぱり大人なんだよなぁ、と思うと申し訳ない。

なるべくみんなが幸せで、そして健康な形で行事が行われればいいのに。
そう思いながらも、こんな大人数が在籍する学園で全員が集まる行事を行うには、それ相応の準備が必要になるのは仕方ないと思う。
だからこそ諦めて大人しく仕事してるのだけど。

クラスの友人たちと話したり、風紀とは関係ないことするのは楽しいけれどやはり休憩するには一人でいたほうがいい。
誘ってくれたけれど、それを断ってまた屋上へ来た。
もちろん今回は鍵を忘れるなどの失態はない。

また木更津と会ってしまいそうだなぁ、と思いながらも寝る準備。
寝てる人間を起こすことはないだろうと予測し、アラームをセットしてその眩しすぎる程輝く青空を眺めてから、そっと目を閉じた。


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