つないだ手

太陽が真上に昇る頃、冷蔵庫を覗くと空っぽの中身。
休日で紅も居ることだし、久しぶりに自分で食材を買いにいくのもいいだろう。
と言っても学園内なのだが、それでも最近は教室と自室、学食程度しか行ってない。

「紅ー、買い物行くからついてきて」

「・・・たまには、外行くか」

「え、ってことは!?」

「たまには嫁を労わらないと、な。昼食も外で食えばいいだろ」

「ホント!?いいの!?」

学外に行くのは本当に久しぶりで、テンションが上がる。
閉鎖的とまではいかないが、食材や文具の揃っている学園から出る必要はあまりない。
なので外へ出るのは散髪や服買いに行ったりぐらいだったので、凄く久しぶりだ。

「宝具はきちんと全て付けろよ。あと、今度俺も労われよ」

「了解っ!じゃあ今度は紅の日でも作って労わったげる」

冗談言って笑いあう、けど今度紅を労わる日はなにかしようかななんて考えながら着替え始める。
脳内では今日は何を食べようかな、っていろんな食べ物が思い浮かんでいる。

外していた宝具を全てつけ、先に着替え終わっていた紅のもとへいく。

「今車だしてもらってる。もう少し待ってろ」

「はーい」

黒羽さんにはもう連絡して許可をとっているらしい。
どうやら変装したり陰から見守ってくれるとのことだ。
まぁでも移動は車でなるべく歩かない様に、との条件を付けられたけど。

「街をブラブラすんのは無理そうだし、デパートで飯食いながら予定決めるか」

「そだね、何食べる?」

なんて会話しながら部屋を出て玄関口に止まっていた車に乗り込む。
スーツに真っ黒なサングラスをかけた運転手さんの車を数十分走らせ、街へ出る。

久しぶりに見る街は活気にあふれ、自分もいろんなお店を歩きながら見たいと思うけどこればっかりはどうしようもないので我慢。
もしも襲われでもしたら危ないしね。

車体が綺麗にデパートの入り口で止まると、紅のエスコートと共に外へ出る。
呼ばれればすぐに迎えに参りますとのことで、そこから紅との初デートだ。
外で手を繋ぐってのは妙に気恥ずかしいのだが、周りでは男同士でも男女、女同士でも普通にみんな手を繋いでるので意識しすぎなだけだろうけど。

一緒に暮らしてるし、あまり外には出して貰えない身なので久しぶりの街は嬉しいし、そこに紅が居るってのも更にプラスのポイントだ。

「中華?和食?洋食?」

「そう言えばお前、あんまり中華のもの作らないよな」

「あんまレシピわかんなくて。調べればいいんだけどさ」

「じゃあ今日は中華にでもするか」

先に腹を満たそうと上階にある高そうなお店の並ぶとこに行く。
中華と決まったので、ちょうど近くに会った中華料理屋さんに入る。
小籠包だったり麻婆豆腐、水餃子など有名なものから興味本位で頼んだものなど、全て美味しく食した。
紅はシュウマイが気に入ったらしく、今度作ってと言ってきたので頑張ろう。

その後調理器具を見に行って新しい包丁や中華鍋、蒸し器を買ったので、今度から家でも中華料理作れる。
ついでに料理本も数冊買って俺の買い物は終わり。
次は本屋さんに行って難しそうな本を買い漁る紅イケメンだなーって思いながら後ろを金魚のフンみたいについていった。

そして一休みと称してカフェに入ってカスタードプリンと紅茶を頼む。
紅は甘そうなベリーのタルトと珈琲で、足を組んでティーカップを持つ仕草は映画のワンシーンかと思うぐらいだ。

「そう言えば紅って普通に甘いの好きだよね」

「まぁ、俺は基本何でも好きだ。度が過ぎなければな」

「甘党は珈琲なんかブラックで飲まないか」

プリンを頼んだけど、紅のタルトも美味しそうなので一口もらった。
もちろん?あーんしてもらったよ、恥ずかしすぎる。

一人、羞恥で悶えてるところで名前を呼ばれて顔を上げる。
紅は口を開けて、プリンを指さした。

「っ、もー、ホント恥ずかしいっ」

と言いながらあーんする俺がきっと一番恥ずかしい奴だ。
二番目はもちろん紅だけど。

その後、一着ずつ相手に似合いそうな服を選ぼうとなったのだが、ものの見事にお互いが選んだ服が一緒だったので初ペアルックだよ。
店員さんの目が生温かくて凄く恥ずかしかった。

そこで、そろそろ時間だからと寮に帰ることになった。
楽しかったと伝えたら、また来ようって言ってくれて、思わず頬がゆるむ。

車に入っても、学園に帰るまで手は繋いだままだった。

つないだ手
(ずっとこの手を離さない)



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