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目を開くとそこはソファーの上。
首を動かしてカーテンの開け放たれた窓越しには輝く星々。
月の光が差し込む室内は、目を凝らしても少ししか見えず、ここがどこだか・・・

「ぎゃーーーーー!!」

「うっせぇ!!あ、起きたのか」

「ひぃ、い、いぁ、やっ」

「落ち着けー、落ち着けー、深呼吸」

簡易ベッドなので、そこそこの大きさと言えどセミダブル程度で男が二人で横になるものじゃないと今日初めて学びましたぜ。

「はぁ、あーもう、今夜の9時だぜ」

「へ?・・・あっ」

なるべく視線を逸らして話しかけるが、やっぱり失礼だろうか。
でも目を逸らしてようが感じる威圧感は物凄いので直視したら死ぬかもしれない。

「ホント、に・・・ごめ、なさい」

「お前がすぐ泣くのも口下手なのもわかった」

「っ・・・・」

「あー、俺も頑張るからお前ももうちょい歩み寄りをだな」

「は、い」

「おしおし、そのちょーし。で、質問。とりあえずイエスかノーだけでいいから」

ベリーの匂いがする紅茶を出してもらい、喉を潤したところで質問開始。
迷惑をかけっぱなしで、でも怖くて、でも優しくて。
彼が教師だからこんな面倒な人間に付き合ってくれてるだけかもしれないが、その辛抱強さは和葉にも通ずるものがあって、もしかしたらちゃんと話せるかもしれない。
と言っても一族の話をするわけにはいかないが。

「お前は本当はSクラス並みの魔力を持ってるな」

「・・・はい」

「何故秘密にしてるのか教えてくれるか?」

「いいえ」

ごめんなさいと心の中で呟きながら膝に置いている手を握りしめる。
あのさ、先生は俺が泣かない様にって思ってやってくれてるんだろうけどさ、確かに顔見なくても良いからってさ、後ろから抱きしめるってなんてこったい。
安心感が半端ないんですけど、ああもう落ち着かない!でも落ち着く!

「眼鏡に埋め込まれてる他の石にも魔力を感じる。これは、なんだ?」

「・・・属性、制御」

イエスかノーだけだったけど、そんなこと忘れ答える。
この人落ち着いて静かに話すとすっごい良い声してて、何というか惑わされてる気分。
決して誘導尋問なんかではないと思う、でも話ししちゃいけないことまで話しそう。

「これも何故してんのか教えてくんねーのか?」

「す、ませ・・・」

教えちゃダメ、ダメなんだぞ自分。

「・・・ダメ?」

「ひぃぃ!!」

「っわ、ごめ、」

吐息を伴った掠れ気味の低音が耳から近距離で聞こえてくる。
その秘めやかな囁き声に、背筋を走る震えと共に短い悲鳴が口から零れた。

俺の悲鳴に謝ってくれたけどさ、ワザとでもやっちゃいけないことだよ、コレ!!
駄目だ、身体の奥底に火を付けられたみたいだ。

「・・・ま、今日はいいや。泊まってけ」

「今日、は?」

「また明日な」

「・・・ご、じょーだんを」

「コレが冗談じゃねーんだよ」

含み笑いと言うか、からかうような意が含まれてる笑い声に、耳朶が赤く染まる。
いや、照れるとこじゃないぞ自分!
今日はやっぱり泣いてばっかで疲れてるのかな!?そうだよね!!
だから体の調子が悪いんだ、だからこんな熱いんだよ、どうしたんだ本当に。

「ぅ・・・っ、寝る」

「はいはーい。・・・ん、」

「ふっぁ、っあぁ」

かーんーだー!?
え、ちょ、ま、噛んだ?今俺の耳噛んだ!?
驚いて身を離そうとするのに、腹で組まれている指は少しの隙間もないぐらいにきっちりしてるし、力強い腕。
駄目だ、ダメだ、恥ずかしい、恥ずかしい、涙でそう。

「お前の泣き顔、思い出してみればなんかイイよな」

「ひぇっ、や、です」

「わぁーってるって。今日は、な?」

フィリア、フィリア、来て来て、助けて!!
身の危険を感じて必死で心の中で名前を叫ぶと、窓に張り付くフィリアを見つけた。
何故に外に居るのかと思ったが、イイ笑顔で去って行った。

あれ、え、あれ!?
俺の事助けてくれるんじゃなかったのーーー!?

「んじゃ、早く寝ようぜ」

「かっ、える!!」

「ダーメ。お前抱き心地いいし。明日は朝から聴取始めるから」

「うっ、うぅ〜」

「お、泣くのか?可愛いなぁ」

「・・・・頭、だいじょぶ?」

思わず聞き返した俺に、先生はいきなり俺の額にキスをすると、抱きかかえたまま身体を動かし横になった。
自然と俺も横になり、その後身体を反転させられて大きな胸板に顔を埋める。

良い香り・・・とか思ってない!思ってない!!
なんか、もういい声に良い香りとかやばいよこの人、もう・・・眠い。

「おやすみ」

君が君であるための免罪符
(そんなもの、所詮どうだっていいのさ)



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